売上が数兆円で安定、好待遇…大手自動車部品メーカーは「就職の意外な狙い目」

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デンソーの公式サイトより

 売上高が数兆円、営業利益が数千億円レベルの大企業も存在する自動車部品メーカー。グローバルに展開する大企業であり、社員の待遇も悪くないにもかかわらず、新卒入社の就職活動では有名なBtoC企業などと比べると志望する人が少ないため「意外な狙い目」になっているという声も聞かれる。大手の自動車部品メーカーは就職先企業としてみた場合、どのような点が魅力なのか。逆に社員として働くうえでのデメリットなどはあるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、マツダ、三菱自動車工業など大手自動車メーカーを頂点とする系列が形成されている自動車業界で、完成車メーカーに部品を納入する自動車部品メーカー。なかでも「Tier1(ティアワン)」と呼ばれる一次下請けメーカーなどには大企業が存在する。その業績をみてみると以下のようになっており、パフォーマンスは高く、安定しているといえる。

・デンソー
  売上高:7兆1447億円
  営業利益: 3806億円

・アイシン精機
  売上高:4兆9095億円
  営業利益: 1433億円

・豊田自動織機
  売上高:3兆8332億円
  営業利益: 2004億円

・トヨタ紡織
  売上高:1兆9536億円
  営業利益: 786億円

・ジェイテクト
  売上高:1兆8915億円
  営業利益: 728億円

※上記は2024年3月期決算

 また、各種転職サイトに掲載されている情報によれば、平均年収は600~800万円台となっており、概ね日本の給与所得者の平均給与とされる458万円(22年/国税庁調べ)を上回っているとみられる。

「デンソーの人からは『平均すると1年のうち3日に1日は休日というイメージなので、休みはしっかり取れる』と聞いたことがある。大手であれば、どの部品メーカーも似たようなもので、年収や労働時間、福利厚生など客観的な情報だけみればホワイト企業といっていい。完成車メーカーは今、どこも業績が良いので、そこにぶら下がる大手部品メーカーも当面は安泰だろう。

 にもかかわらず、一般的な知名度はそれほど高くないため、就職人気ランキングなどで上位にくるようなことはない。学生はどうしても完成車メーカーやサントリー、ソニーといった有名BtoC企業、総合商社やメガバンクなどを志望しがちで、グローバルに展開して世界市場で高いシェアを持つ部品メーカー、BtoB企業というのは意外に穴場と化している」(自動車業界関係者)

 別の自動車業界関係者はいう。

「大手の自動車部品メーカーは比較的おすすめの業界とはいえるが、どこの完成車メーカーが主要取引先なのかはチェックしたほうがよい。たとえば公正取引委員会から下請法違反の再発防止勧告を受けた日産自動車による“下請けイジメ”が今クローズアップされているが、どの自動車メーカーをメイン顧客とするのかによっても違ってくる」

所有する特許の数も多いため収益性が高い

 大手の自動車部品メーカーは、就職先企業としてみた場合、どのような点が魅力なのか。株式会社UZUZ COLLEGE代表取締役の川畑翔太郎氏はいう。

「まず技術職についていえば、所有する特許の数も多いため収益性が高く、専門性が高いゆえに高い技術力が身につくので、就職先としては非常に良いといえます。理系学生の間ではトヨタなど完成車メーカーのほうが人気が高いと思われがちですが、研究熱心でやりたい仕事(分野)が明確な学生ほど、デンソーやアイシンなどの技術分野が専門的な大手部品メーカーに進む傾向があります。

 営業職は、売る商品も売る相手である顧客企業もある程度決まっており、どちらかというと商品力が強いルート営業の色合いが強いため、一般的な営業職と比べると“売るための大変さ”は低め。なので営業職においては“すごくキツイ業界”ということはないでしょう。このほか、人事や経理など管理系の事務職は、大企業で安定している上に将来的なキャリアパスとしても箔(はく)が付くので、大手部品メーカーに就職できれば“安泰”といえます」