なぜ、みずほ銀行は男性にこのような行為を行ったのか。
「銀行側の理由が何なのかは推察するしかありません。男性が退職勧奨を受けるきっかけとなった、支店長への報告の対象となった上司というのが幹部クラスの行員だったということもあり、一度決めた方針(=男性の解雇)を変更するわけにはいかないという“大企業の論理”が銀行内で働いたのかもしれません。また、一連の男性への行為が明るみに出ると、みずほ銀行の体裁が悪くなるため、男性の口を塞いでおきたいという思惑もあったのかもしれません」(同)
東京地裁は、みずほ銀行の行為について
「このような長期間の自宅待機命令は、通常想定し難い異常な事態」
「その対応は不誠実であるといわざるを得ない」
「社会通念上許容される限度を超えた違法な退職勧奨として不法行為が成立する」
とし、同社に対し330万円の賠償金の支払いを命じた。その一方、懲戒解雇は有効だとした。この裁判所の判断を原告代理人として、どう受け止めているのか。
「裁判所は男性と銀行を対等的、フラットな関係にみているという印象を受けましたが、実際には一行員とみずほ銀行の関係は“蟻と巨象”といえるほどの格差があります。銀行が何十回も男性を呼び出したり、4年以上も自宅待機を命じたり、内部通報制度のルールを破ったりといったコンプラを無視した異常な行動を繰り返し、男性は大きな精神的な苦しみを味わったわけです。それに対して300万円程度の慰謝料というのは、人生をめちゃくちゃにされた労働者にあまりに情がない判断と感じます。
裁判所には、ハラスメントを表層的にではなく、もっと深刻に受け止めてほしいと思いますし、大企業の責任というものに厳しい視線を持ってほしいと思います」(同)
(文=Business Journal編集部、協力=笹山尚人弁護士/東京法律事務所)