デロイトがSAPを使ったシステム開発で豊富な実績を持っていることは事実だが、業態や個別企業の業務実態によってはSAPが不向きなケースもあるし、デロイトに食品メーカーの業務実務に詳しいエンジニアがいたのかどうかという問題もある。また、ベンダに発注する企業側にも、システム開発に詳しく社内で要件を整理したりプロジェクトをマネジメントしつつ、ベンダを管理する能力もある人間が必要だが、グリコ側にそうした人間がおらず、プロジェクト体制がしっかり構築されていなかったという可能性も考えられる。
日本企業では社内に大規模なシステム開発のノウハウを持っていないところも少なくなく、外部のベンダに頼り切りになってしまった結果、開発が失敗に終わるケースも珍しくない。特に統合基幹業務システムの開発・刷新は社内の複数の部署にまたがり業務そのものを変えていくため大規模かつ難易度が高く、プロジェクトが頓挫するケースもある。
また、なんだかんだと無理も聞いてくれる国内ベンダとは対照的に、外資系コンサルのベンダはドライなので、プロジェクトの途中で突然中止や『ゼロからやりなおし』を提案してきたり、『これはできない』と言ってきたりと、簡単に梯子を外してくることもある。なので発注する側に企業側にも高いスキルが求められる。グリコに関していえば、延期もしてさんざん時間もお金もかけてしまい、もう引っ込みがつかなくなり強引にリリースまで持ってきたはいいものの、いろいろな部分で不備が発覚して火が噴いているという印象。正常化まではかなり時間を要するのではないかと感じる」(大手IT企業SE)
過去には大規模システムの開発中止をめぐって発注元企業とベンダが訴訟に発展するケースもある。テルモは物流管理システム刷新プロジェクトが中止となり、2014年に委託先ベンダのアクセンチュアを相手取り38億円の損害賠償を求めて提訴。また、12年に基幹系システムの全面刷新を中止した特許庁は、開発委託先の東芝ソリューション(現・東芝デジタルソリューションズ)とアクセンチュアから開発費と利子あわせて約56億円の返納金の支払いを受けることで合意している。
(文=Business Journal編集部)