「イトーヨーカドーのアパレル売場が復活している」本当?アダストリアの勝算

 アパレルのコングロマリット企業であるアダストリアは売上高2756億円(2024年2月期)で、ファーストリテイリング、『しまむら』に次ぐ業界3位。全国に214店舗を展開する『グローバルワーク』(売上高516億円)、141店舗の『ニコアンド』(335億円)、78店舗の『ラコレ』(108億円)などが主力ブランドで、昨年春にはグローバルワークの派生ブランドとして価格帯も店内の雰囲気も量販店に近い『グローバルワークスマイルシードストア』を立ち上げています。ヨーカ堂のファウンドグッドの品揃えはラコレに似ているという印象です。ファストリのユニクロ、GUや『しまむら』の強みは衣類はもちろんのこと靴下や肌着などを含む日用品が充実している点ですが、この部分はアダストリアのブランドはやや弱い。ヨーカ堂はアパレル事業からは撤退したものの肌着などの日用品は引き続き自社で手がけており、アダストリアには日用品以外のアパレルをお願いしているかたちです。こうなると、アパレルから肌着、雑貨まで一つの店舗で買えて、かつ信頼度の高いユニクロなどのほうが消費者から選ばれやすくなってしまいます。

 実際にイトーヨーカドーの木場店と松戸店のファウンドグッドを観察してみましたが、たくさんお客が集まって活況を呈しているという状況ではありませんでした。木場店はエスカレーターを降りてファウンドグッドの奥のほうにユニクロがあるのですが、人の流れとしてはファウンドグッドの前を素通りしてユニクロに吸い込まれていくという状況でした。まだ立ち上がったばかりでブランドの認知度が低いということもありますが、ファウンドグッドによってヨーカ堂のアパレル売り場が復活に至るには、これからかなり頑張らなければ厳しいというのが正直な感想です」

 ファウンドグッドの認知度アップに向けた課題について磯部氏はいう。

「アダストリアのブランドの世間的な認知度は、あまり高いとはいえないのではないでしょうか。同社のEC販売は689億円で、全体の売上を考えるとEC比率はそこそこあるものの、他社EC経由での販売が全売上の28%なのに対し、自社EC『.st(ドットエスティ)』経由は15%ほど。テレビCMを打ったりOMO型リアル店舗『ドットエスティストア』を出店するなど力を入れているものの伸び悩んでいます。なのでマス向けに強い訴求力を発揮して高い認知度を獲得することに長けているという印象は薄いです」(磯部氏)

 ではファウンドグッドがヨーカ堂復活の起爆剤になる可能性はあるのか。

「業態的に厳しいといわれるGMSのイオンにしてもヨーカ堂にしても、食品売り場の競争力が集客の要になっていると思いますが、低価格を武器とする食品スーパーのオーケーやベルク、ライフ、ヤオコーなどが存在感を増しており、こうしたスーパーと同じ建物にパシオスや『しまむら』など人気アパレルチェーンが軒を並べるというケースも出てきています。こうした形態に対し、ヨーカ堂が店内にファウンドグッドを持ったとしても優位性を保つためには、アダストリアの持っているブランドプロデュース力を存分に発揮させ、競合施設とは違った魅力を創り出して戦っていかなけばならないと思います」(磯部氏)

(文=Business Journal編集部、協力=磯部孝/ファッションビジネス・コンサルタント)