「第2の柱」があるなら「第1の柱」もあるわけで、これは多国籍企業が稼いだ利益(正確には課税権)をどうやって市場国に分配しようかというテーマで、同様に導入を目指して議論が継続している。OECDでは、2021年10月にグローバルミニマム課税の導入が決定された。正式には「GloBE(グローブ:Global Anti-Base Erosion Rules)ルール」と呼び、企業が最低限負担すべき法人税の割合を15%に定める仕組み。売上高などの収入金額が7.5億ユーロ(約1200億円)以上の多国籍企業に世界中どこでも15%以上の税負担を負わせる。子会社などが進出する各国で、その国における実効税率が15%を下回れば、親会社がある国で差分を支払う仕組みだ。日本では前述のように2024年度以降、段階的に導入されることになっている。
「何かイタチごっこがまた始まりつつあるのかなというふうに見ています。(BEPS防止には)限界があるので、しばらくするとさまざまな隙間というか落とし穴みたいなものが出てきて、それについてまた何か税制解析が始まるのかなと思っています。日本企業における現場感としては、グローバルミニマム課税は運用が大変な制度です」(結城氏)
果たして、国家間の税率下げ競争に歯止めがかかるのか、そして、実質的な租税回避の流れは緩和されるのか。単にルールが複雑化しただけで終わるようなことがないよう注視していきたい。
(文=横山渉/ジャーナリスト、協力=デロイトトーマツグループ)