京都大学、工学部の入試で女子枠、議論呼ぶ…「差別」批判が的外れな理由

 実際に企業に取材をすると、技術職や研究職として採用の対象となる理工系学部の女子学生が本当に少なく、採用が極めて難しいという声を聞きます。女性の若手社員が少ないということは将来的に女性管理職の確保が難しくなるということに直結し、特に海外でビジネスを展開する上では大きなデメリットになると企業は強く認識しており、それが政府と大学の背中を押しているわけです」(石渡氏)

選考はかなり厳しい

 女子枠の入試では、一般的な入試で課される科目の試験を行わないケースもあり、一部から疑問の声が寄せられているのも事実だ。たとえば東京工業大学の24年度入試では、情報理工学院は面接のみ、工学院や物質理工学院は大学独自の二次試験を課さずに面接と大学入学共通テストの成績のみで選考する。一方、京大の女性募集枠では大学入学共通テストの成績に加え専攻分野に関わる能力測定考査、口頭試問の結果に基づき選考する。

「国立大学の総合型選抜や学校推薦型選抜で合格するのはかなり難しいですが、同様に女子枠の選考もかなり厳しいと考えたほうがよいです。女子枠で入学した学生も入学後は一般入試組と一緒に学ぶことになるので、入学時の学力が足りなければついていけずに進級できず、最悪は退学するということにつながりかねず、そういう事例が増えれば女子枠という制度に批判が寄せられることになる。当然ながら大学側はそのようなリスクは織り込み済みなので、入試において学力に関してはかなり厳しくみています」(石渡氏)

(文=Business Journal編集部、協力=石渡嶺司/大学ジャーナリスト)