「今回落っこちたアプリがAWS上で動いているのか、Google Cloud上で動いているのか、もしくはクラウドではない場所で動いているのかは分からない。ただ、世界同時で類似の障害が起きたことから推察するに、モバイルアプリはマクドナルドが世界共通で運用しているクラウド上で動いていて、そのクラウド側の設定作業か何かの過程でミスが生じた可能性も考えられる。また、マクドナルドは今後、世界中の店舗をGoogle Cloudに接続して、生成AIを導入して業務効率向上を図ると言っているので、それに向けた実証テストの過程などで不測の事態が起きたというケースも考えられる。
マクドナルドの店舗に行けば分かるように、現在では客はスマホのアプリでオーダーしてカードやPay系で支払い処理を行うという形態が主流となっており、その前提での店舗のつくりやオペレーションになっている。すでに現金支払いは例外的な位置づけとなっており、キャッシュレス決済のシステムが落ちるとオペレーションが回らず休業にまで追い込まれるというのは、キャッシュレス対応が進んだ店舗の盲点が露呈したともいえる」
15日の障害発生時、一部店舗ではスタッフがお客の注文を紙にメモして口頭で厨房にオーダー内容を伝え、現金支払いで対応していたが、なぜシステム障害で休業に追い込まれる店舗が出たのか。前出・山口氏はいう。
「システム障害によってデータの不整合が生じた場合など、根本となる原因を取り除いても復旧までに長い時間を要する場合があります。営業中の店舗では紙のメモや電卓を駆使して注文を捌いていたようですが、こうしたやり方では通常のサービスレベルを維持できないと判断した可能性があります。マクドナルドはアプリからのモバイルオーダーやデリバリー、店舗ではセルフオーダー端末やキャッシュレス決済などIT投資を進めてきました。2024年からはグーグルと提携し、クラウドや生成AIを活用してシステムを刷新していく方針ですが、ITへの依存度が高まることで障害が起きたときの対応方法がより重要になりそうです」
前出・SEはいう。
「日が明けてもまだ障害が長引いているということは、国内のみの要因ではなく米国マクドナルド社が国をまたいで世界共通で運用するシステムで不具合が生じているという可能性が考えられる。全世界共通の基盤を運営してデータ分析・マーケティング精度向上・業務効率向上・売上向上を図るというのはメリットがある一方、システムが巨大になり過ぎて障害発生時の影響が大規模化かつ長期化するというデメリットもある。全店舗が丸一日休業するような障害が年に複数回起きれば、それだけで数十億円単位の売上損失につながり、システム投資による利益改善分が吹き飛ぶことも想定され、費用対効果の評価は難しいところだ」
(文=Business Journal編集部、協力=山口健太/ITジャーナリスト)