日産自動車、壮絶な下請けいじめ…上納金を要求、納品時に5割の減額要求

 部品調達先の削減は自動車業界の慣例である「ケイレツ」の解体を意味した。日産は調達先を絞り込み1社あたりへの発注量を増やすのと引き換えに大幅な値引きを要請。これによりコスト削減を実現してきた。

「下請けへの値下げ行為が、日産の業績を良く見せるための都合良い、かつ重要なツールになっていた。社内ではコスト削減が担当者への評価に反映されるため、決算前のシーズンに駆け込みで下請けに値下げを要求するということまで行われていた。それが『WBS』内で部品メーカーが証言している『合理化要請』と呼ばれるもの。日産は個別の発注書でその値下げ分を値引きして支払うかたちにして、事実上の上納金を納めさせていた。日産は『あくまで下請けとの合意の上』と主張しているが、『強制的に受け入れさせた合意』という意味ではそのとおりだろう」(自動車業界関係者)

「程度に差こそあれ、似たようなことや、仮発注のようなかたちで金額を決めないままモノをつくらせるといったことは、過去には自動車業界全体で広くみられた。ただ、他社はコンプラ的にさすがにまずいということで是正したが、日産は続けていたということ」(別の自動車業界関係者)

 また、前出・桜井氏はいう。

「日産リバイバルプランで調達先の数を大きく絞った過去もあり、日産は他の自動車メーカーと比較して下請けに厳しい傾向があり、下請けメーカー側も取引を切られるのを恐れて声をあげられない。たとえば、トヨタ自動車とホンダは今期、物価・人件費の上昇などを鑑みて下請けへの定期的な値下げ交渉を見送り、部品メーカーが原価低減できた分は自分たちの利益にしていいですよというかたちにしていたが、日産は値下げ交渉を行っていた。このように日産には下請けに対して冷たい面がある」(3月20日付当サイト記事より)

会見を開かない日産

 今回の公取委の勧告を受け、日産は

「法令遵守体制の強化を行うとともに、再発防止策の徹底に取り組み、今後の取引適正化を図ってまいります」

とのコメントを発表した一方、記者会見は開いていない。

「事案の重大さからいえば会見を開くべきだが、日産としては実態をありのまま話せば企業としての信用問題につながりかねないため『開きたくない』というのが本音だろう。『検査不正などと違って一般消費者に迷惑をかけているわけではない』というロジックかもしれないが、これがトヨタやホンダであれば、しっかり会見を開いて経営陣が謝罪し、禊を済ませるところだろう。こうしたところに日産のカラーが出ている」(全国紙記者)

 下請けと元請けの関係も変わりつつあるという。

「自動車メーカーに限らず、製造業全体でみると、これまで大手の下請けでやってきた中小メーカーが海外に活路を見出し、技術力のある企業は自力で海外企業からの受注を増やしている。これまで下請けを囲い込んで安値で受注させていた大手が、これからは逆に下請けから『切られる』『選別される』という動きも出てくるだろう。最近では、これまでトヨタのほぼ言い値で鋼材を納めていた日本製鉄がトヨタに大幅な値上げを要求するという“事件”も起きているが、完成車メーカーだけが儲ける自動車業界も健全な状況に向かっていくかもしれない」(自動車業界関係者)

(文=Business Journal編集部)