認証試験における不正が発覚し、全車種について出荷停止措置が取られるなど大きな社会問題となったダイハツ工業は、2月の販売台数見通しが前年同月比で8割減となる見通しだと報じられた。だが、消費者の信頼を大きく裏切る行為をしたダイハツのクルマを購入している人が2割いるという事実に驚く声もある。
ダイハツは昨年、認証試験における不正が発覚し、現在も全車種について出荷停止措置が取られた。2月下旬以降、一部の出荷が再開しているが、売れ筋車種である軽自動車「タント」などは国土交通省からの出荷停止指示が解かれていない。
第三者委員会の報告書によると、不正行為は174個、全64車種に及んだ。一番古いもので1989年の不正が認められ、30年以上も歪んだ経営が続いていたことが明らかになった。2月の販売台数が前年同月比で8割減と見通されているが、それでもダイハツのクルマを購入している残り2割について、自動車ライターの桑野将二郎氏は次のように分析する。
「今年に入ってから登録されているダイハツの新車は、これまで受注済みであったにもかかわらず、不正問題で出荷および登録が遅れていた車両がほとんどだと思われます。メーカーの関係者から聞き取った話では、およそ6万台の受注残車両が存在していたとのことです。ですから、今年売れたというより、昨年から契約・納車が遅れていた未処理の車両が、ようやく消費者に納められたという見方が正しいのではないでしょうか。つまり、実質の新規製造販売台数は、発表されている数字よりも格段に少ない台数であるはずです」
では、不正発覚前に契約し、そのまま契約を解除していないケースについて、製造後にキャンセルは可能なのだろうか。
「キャンセルの処理は、メーカーとしての対応ではなく、販売会社に委ねられています。ですから、ディーラーごとに対応が異なる可能性もあります。ただ、実質的にキャンセルをすること自体は可能です。
実際に不正発覚後の契約解除はどれくらいあったのか、メーカーの関係者から聞き取った話によると、ほとんど無かったとのことでした。ちょっと意外に感じられるかもしれませんが、今回の不正問題を理由に契約解除されたユーザーは、かなりの少数であったということがメーカーへの取材で明らかになりました。
不正問題をユーザーがどう捉えているのか、メディアとしても気になるところではありますが、高い購入意欲を持ってダイハツの車種を選んだユーザーにとっては、ブランドへの信頼や過去の実績などに対する評価が、想像よりも高いのかもしれません」(桑野氏)
また、官公庁などで事前に大量発注しているケースもあるだろうが、そのような場合は取り消しになりうるのだろうか。
「官公庁をはじめ法人などの大量発注に対するキャンセルは、リース契約の兼ね合いや納期の問題などから発生しているのは事実のようですが、メーカー関係者への取材によると、『多くはない』という回答でした。大口契約の顧客に対しては、これもメーカーとしてではなく販売会社ごとの対応となっていますが、不正が発覚した時期よりも前に納車を終えているケースが多かったようで、実質的に大きな影響は受けていないようです」(同)
“前年同月比8割減”の裏側には、不正発覚前に契約が終わっており、そのままキャンセルせずに購入した人が多い、との見方だ。「かつて不正があっても、もう裏切らないはず」という期待を込めたユーザーが少なからずいるのだろう。ダイハツは、その期待に応える義務があるといえるだろう。
(文=Business Journal編集部、協力=桑野将二郎/自動車ライター)