当サイトは23年1月29日付記事で原因不明の事故が多発している背景を追っていたが、以下に再掲載する。
――以下、再掲載――
電気自動車(EV)メーカー、テスラの「モデルS P85」でバッテリー不具合が生じ、同社から交換費用の見積もりとして230万円を提示されたという事例が話題を呼んでいる。SNSのX(旧Twitter)に投稿されたツイートによれば、この投稿主は2019年10月に認定中古車として購入し、今年3月に車検を受けたが、5月頃に突然バッテリーが故障。無料交換が可能な保証期間が昨年11月に切れていたため、交換費用が発生するという。日本でもEVの普及が進むが、EVではこうした予期せぬ事態やリスクは多いのだろうか。専門家に聞いた。
欧州連合(EU)が2035年にガソリンなどで走るエンジン車の新車販売を禁止する方針を決めるなど(環境に良い合成燃料を使用するエンジン車は販売可能)、世界的にEVシフトが進むなか、日本でも購入時の補助金に後押しされるかたちで徐々にEVが増加。22年度の国内の全乗用車販売のうちEVが占める割合は2.1%となっている(日本自動車販売協会連合会などの発表より)。テスラはEV販売台数で世界シェア1位であり、22年の世界販売台数は131万台に上るが、日本での同年の販売台数は約6000台(1月26日付日経産業新聞より)。ちなみに22年度の国内メーカーのEV販売台数は、日産自動車の軽EV「サクラ」が3万3097台、日産「リーフ」が1万2751台、三菱自動車の軽EV「eKクロスEV」が7657台となっており、その知名度とは裏腹に日本でのテスラの普及はまだこれからといえる段階だ。
そんなテスラ車の購入を検討している人にとっては心配になる事態が報告された。前述のツイート主によれば、テスラに相談したところ、バッテリーが故障した状態では買取ができないと拒否され、修理すれば90万円で買い取ると言われたという。これはテスラ車特有のリスクといえるのか。中古車販売店経営者で自動車ライターの桑野将二郎氏に聞いた。
――バッテリー交換に230万円というのは、適正な金額といえるのか。
桑野氏 EVはまだ発展途上。とくにバッテリーの性能は日進月歩の状態です。他のEVを例に挙げると、日産の初代「リーフ(ZE0型)」は生産終了からすでに5年経過していますから、バッテリーの劣化した中古車が市場でも多く見られます。私自身、昨年に走行距離6万kmの中古リーフを50万円で購入して乗っていましたが、買った時からバッテリーの充電容量が減っていて、満充電でもエアコンをつけたら50km程度しか走れませんでした。さすがに不便なので、ディーラーでメインバッテリーの交換を見積りしたら、バッテリー代だけで80万円以上、交換工賃10万円以上、合計でおよそ100万円でした。
初代リーフの新車当時の販売価格は、約270万~450万円でした。バッテリー容量によって値段が違いましたが、小さいバッテリーの安いモデルは本当に近所の移動くらいにしか使えないレベルでしたから、実用性を考えると大きなバッテリーの高額モデルという選択になります。一方のテスラ「モデルS」は新車時価格が約1300万円ですから、この車両価格の差に準じて部品の値段も高くなることを考えれば、バッテリー交換が230万円というのは常識の範囲内だと思います。
――このような事態は、日本メーカーのEVでも起こり得るのか。
桑野氏 前述のように、日産リーフも同様といえるのではないでしょうか。三菱自動車の「i-MiEV(アイ・ミーブ)」でもまた同じ。実際に私自身、所有して経験してきたので間違いないです。日本メーカーのEVはメインバッテリーが劣化すると使い物になりません。そう考えると、テスラは保証期間も長いですし、バッテリーは日本のEVに比べて非常に劣化しにくいというデータもあり、リセールバリューも含め、テスラのほうが優秀だという見方ができます。