NEC子会社で過労死→社内で長時間放置…NECグループ働き方改革のけん引役

NEC玉川ルネッサンスシティ
NECマネジメントパートナー本社が入るNEC玉川ルネッサンスシティ

 NECの子会社「NECマネジメントパートナー」の男性社員(当時43)が、2021年に脳幹出血で死亡した事案について、川崎北労働基準監督署は長時間労働による過労が原因として労災認定した。

 男性はNECショールームやウェビナースタジオのプロデューサーをしていたが、裁量労働制が適用されており、死亡前1カ月の時間外労働は80時間を超えたという。2021年3月27日朝に都内の事務所で倒れているのが発見されたが、26日未明に死亡したとみられるという。

 死亡推定時刻から発見まで、長時間たっていることから、男性の母親は会見で「倒れた息子が放置された理由がわからない。真実が知りたい」と訴えた。

 そこでBusiness Journal編集部はNECマネジメントパートナーの広報部に見解を求めた。

――なぜ亡くなったまま長時間放置されていたのか、状況をお聞かせいただけないでしょうか。

広報担当「元社員が発見された場所は旧オフィスであり、新たなオフィスへの移転時期と重なったため、人の出入りが限られていました。当時、各方面に確認を行いましたが、結果的に発見に時間を要してしまいました」

――貴社はNECグループの働き方改革を推進する役を担っていると喧伝されていますが、 貴社における働き方は、一部の社員に集中するような状況にはないのでしょうか。

広報担当「特にそのような状況にあるとは捉えておりません」

 NECマネジメントパートナーは、会社の事業内容について「NECグループの業務改革推進プロジェクトの中心である『11万人の働き方改革』の中核を担っています」と謳っている。

 同社は公式サイトの採用情報において、「オフィスや制度において働きやすい環境を整備し、社員のみなさんがオフィス内で働く場所を選択できるフリーアドレス化や、自宅などで仕事ができるテレワーク勤務や、遠隔地リモートワークを導入し、『リモート』と『リアル』のハイブリッドワークによる最適なワークスタイルを実現しています」として、個人の好みに応じた働き方を取り入れている。

 また、働く時間についても「コアタイムのないフレックス制度『スーパーフレックス』の導入により、一人ひとりが業務やチームの状況に合わせ、主体的かつ柔軟に働く時間を選択し、最適なタイミングで各自休憩を取得できるようになりました」とアピールしている。

 それにもかかわらず、社員が過労死したのはなぜなのか。ある転職エージェントは、その理由を次のように分析する。

「NECマネジメントパートナーは、表向きは『NECグループのDX変革を担う中核会社』と位置付けられ、NEC本体に準じた待遇や福利厚生があるように思われがちですが、実際は本体に比べると基本給は低く抑えられており、手当なども厚くはありません。平均残業時間は月20~30時間程度といわれていますが、社員個人が自分の抱えている仕事などに応じて仕事時間を調整できる半面、かえって長時間残業することもできてしまうわけです。亡くなった男性も、裁量労働制が適用されていたとのことですから、体に不調を感じても無理して時間外労働をしていたのかもしれません」

 男性遺族の代理人弁護士によると、男性は死亡前1カ月の間に大阪などへ3回出張しており、休みは十分に取れていなかったと訴えている。遺族の悲しみは当然大きいと推察されるが、会社にとっても社会にとっても働き盛りの社員を失うことは大きな損失だ。このような事故が起こらないように社会の変革が進んでほしい限りである。

(文=Business Journal編集部)