モンスト、発売から10年でも国内売上1位の謎…巧妙な仕掛け&収益構造

 ゲームとしてのシンプルさやインフレのしにくさなどにより、モンストは気軽にプレイしやすいゲームとしての地位を確立できており、継続的にプレイする課金ユーザーを確保できているということのようだ。課金至上主義ではないゲームの仕様が好印象を与え、結果的に少額課金のユーザーを大量に生み出しているのだとしたら、一部のヘビーユーザーの大量課金に依存するゲームよりも、よっぽど健全なビジネスモデルといえるかもしれない。

国内市場はすでに飽和状態、プレイしてもらえるゲームの条件

 モンスト、ウマ娘、FGOと続く業界情勢だが、俯瞰してみると国内モバイルゲーム市場は「すでに成熟している」と岩崎氏。

「今の市場は、新規のゲームを売るのが難しい状況です。そもそもモバイルゲームというのは、ガチャやクエストで入手できるカードやユニットを集める蓄積型のものが大半を占めています。セールスランキング上位のモンスト、ウマ娘、FGO、パズドラ、原神はすべて蓄積型のゲームです。入手したカードやユニットは金額や時間を投資して得たものであり、ユーザーからすると“財産”のような認識となっているため、なかなか引退できない。引退は財産を手放すような行為になりますからね。

 また、モバイルゲームは同時進行でプレイできるのが、せいぜい3本ぐらいまでといわれています。しかも優先度が高い1、2本目ほど課金してもらい、3本目になるとほぼ無課金で遊ぶ傾向にあり、ゲーム会社はなんとか1本目の選択肢に入るべく奮闘しているのです。

 しかし、現在のモバイルゲームのタイトルには歴史が長いものも多く、アクティブユーザーもそちらに傾倒しているため、新しい作品はあまり注目されません。そういった背景があり、モンストやウマ娘のような気軽に引退できないゲームをプレイするユーザーからすると、ほかのゲームで同じ規模の投資をする余裕はないので、必然的に新しいゲームに課金する可能性は低くなるという構造になっているというわけです」(同)

 とはいえモンストが安泰というわけでもないらしい。現在の市場でトレンドとなっている人気ゲームも、油断ならない状況になるという。

「近年は、モバイル育成シミュレーションゲームが徐々に台頭していました。これはストーリー、シナリオで育てたキャラクターを、試合や戦闘に繰り出してプレイする、というゲームスタイルでして、『実況パワフルプロ野球』やウマ娘などがその筆頭です。

 タッチ操作でプレイできるRPGであるモンストやパズドラ、王道モバイルゲームRPGであるFGO、ハイグラフィックRPGで超大作である原神とは異なり、スマホをポチポチと操作するだけで簡単にやりこむことができる優れたゲームシステムとなっているため、人気を博しました。ちなみにウマ娘は21年にリリースされたばかりの新参ゲームなのですが、蓄積型とモバイル育成シミュレーションゲームという注目度の高い要素を2つ備えていたため、短期間でものすごい売上を叩きだしたのでしょう。

 ですが、モバイル育成シミュレーションゲームの欠点は、時間がかかりすぎること。漫画アプリや映画のサブスクリプションサービスなど、可処分時間に楽しめる娯楽は増えていますので、ゲームだけに時間を割くことができないという人も多いでしょう。モバイル育成シミュレーションゲームはもちろんですが、1回のプレイに時間がかかりすぎてしまうモバイルゲームは行き詰まりを見せていくと私は考えています」(同)

 モンストも高難易度クエストのプレイや強いキャラクターの育成をする場合には、時間がかかることもあるため、決して対岸の火事ではないということのようだ。

(取材・文=文月/A4studio、協力=岩崎啓眞/ゲームプロデューサー)