空港地上スタッフ不足が深刻、運航に影響…コロナ禍の発注停止で大量離職

 国土交通省はグラハン業界の持続的な発展に向け、人材確保やDX(デジタルトランスフォーメーション)化・GX(グリーントランスフォーメーション)化を推進していくため、今年初めに「持続的な発展に向けた空港業務のあり方検討会」を設置した。人員不足解消には待遇改善の原資となる航空会社からの受託料引き上げなどが必要だが、こうした問題に対応できる体制にすべく、グラハン事業者らは8月25日に「空港グランドハンドリング協会」を発足させた。航空会社など特別会員を加えると計53社が加入した(10月現在55社)。

ANAとJAL、10空港でグラハンの資格共通化

 グラハンの人手不足の陰には、これまでの慣習や縄張り意識のような側面もあった。例えば、同じような作業でもANAとJALではレギュレーションが異なるため、それぞれの会社で資格を取る必要があった。一つひとつの作業に研修や社内資格の取得が義務づけられており、その数は優に100を超えるという。認定を受けた人員でなければ作業に当たることができなかったため、グラハン事業者は、航空会社ごとの専属チームを設ける必要があるなど非効率だった。人材不足の地方空港ではこうした制限が大きなハードルになっていた。

 空港グランドハンドリング協会の設立目的には、資格や車両仕様などに関する業界ルールの整備と生産性の向上もある。協会ではこうした部分についても航空会社に申し入れを行って、改善を進めていくとしている。そのかいあってか、ANAとJALはグラハンに必要な社内資格の一部を、来年4月から共通化すると発表した。対象は、両社が同じグラハン事業者に業務を委託している仙台や新潟など国内の10空港。どちらかで資格を取れば、両社のいずれでも業務ができるようになる。国土交通省は空港内を走るバスや作業車両の自動化を推進しており、こうしたDX化は人材不足解消の一助になるだろう。

(文=横山渉/ジャーナリスト、協力=橋本安男/航空経営研究所主席研究員)