マクドナルド「グラコロ」に虫が混入…マックでの異物混入は不可避である理由

「数年前に世間を騒がせた品質問題で一時は経営が危ういとまでいわれたマクドナルドだけに、現在では大手外食チェーンのなかで1、2を争うほど品質管理・衛生管理を徹底している。だが、どれだけ徹底していても、全国に3000店舗近くあれば、どうしても一定の確率で異物混入などのアクシデントが起きてしまうのは避けられない。特に忙しい店舗では厨房スタッフがものすごいスピードで次々と商品をつくってラッピングしていくため、その過程で何かが混入しても気が付かないという事態も起こり得る。マックの店舗は、客の出入り口とレジカウンター、厨房が空間的につながっている構造のところが多く、出入り口から虫が店内に入り、それが厨房まで入ってきてしまうというのは防ぎようがない。むしろマクドナルドほどの規模のチェーンで、この1年で発生した異物混入などの事故が3件というのは、非常に少なくて優秀という印象すら受ける」(外食チェーン関係者)

 当サイトは2月18日付記事『マクドナルド、商品にゴキブリや人の爪が混入…8年前の悪夢再来か、事故再発の理由』で、飲食店の異物混入防止への取り組みや、どのような事案がなくならない背景について報じていたが、以下に改めて再掲載する。

――以下、再掲載――

 過去の不祥事を教訓に万全の品質管理体制を維持しているようにみえたマクドナルドで、なぜ再び問題が続いているのか。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏に解説してもらった。

混入を100%防ぐのは困難

 なぜゴキブリの混入が起きるのか。厨房(キッチン)と販売カウンター、客席、屋外は、仕切られていたり扉があったとしても、空間としてはつながっており、扉の開け閉めによって接触が避けられない造りとなっています。つまり、どんなに注意を払っていても、外部からの虫などの侵入を100%遮断することは困難であり、調理の途中でふと目を離した隙に虫が異物として混入してしまう可能性が残されてしまいます。毎日長時間調理をしている店舗では、どれほど管理を徹底しても100%大丈夫とは言い切れません。

 飲食店で大きなゴキブリを見かけることがありますが、これは店舗が不衛生というよりも、多くは店外のゴミ捨て場や公園の草むらなどに生息する外部のゴキブリが、飲食店の食べ物の匂いにひかれて迷いこんでしまったケースが多いと思います。路面1階の店舗だと、扉の開け閉めのタイミングで隙間から侵入してくるので、店側からすると本当に迷惑なことです。

 ただ、小さな茶色いゴキブリ、通称チャバネは、お店に住み着いていることが多く、これを何回か見かけたら、お店の責任だと思ってもいいでしょう。チャバネは、製氷機、洗浄機、冷蔵庫などのモーター付近の温かいところを中心に生息していて、放っておいても減ることはまずありません。駆除業者に依頼して退治するのが通常で、マクドナルドのような大手チェーンは定期的に駆除業者を入れているので、今回の事件は「外部から侵入した虫」だと考えられます。

 さらに通常の飲食店よりも保健所の許可が厳しくなる「食品の製造販売」では、製造場所は作業区分に応じて区画されたり、作業場外に原料倉庫を設けたり、極力外部と遮断された空間を求められます(取り扱う食品の種類や保健所によって判断基準は若干異なります)。床から天井まで壁を設置して外部と遮断された空間で調理していれば虫の侵入はなさそうですが、人の出入りがある扉の開閉がある以上、100%の遮断・隔離は困難で、外部から材料(段ボールや容器関連)を運び込む際に虫がついている可能性も0%ではありません。

 マクドナルドのような大手チェーンは、虫の混入は企業イメージのダウンとなり痛手になることは十分に認識しており、相当な注意を払って対策をしているはずですが、確率的に100%大丈夫とはいえないため、今後もこのようなことは起こり得ると考えられます。もちろん、衛生管理や定期的な害虫駆除、外部空間との接触面の最小化(極力隙間をつくらない)、扉の開閉時間の短縮、調理空間までの間に距離を置くなど、可能な限りの対策は必要となりますが、店舗の造りや広さによっても限界があるのが実情です。

(文=Business Journal編集部)