宅配業界、競合から「協業」へ…値上げや再配達・時間指定の有料化は必然

――官民が一体となって効率化に取り組んでいるわけですね。

坂田 リクルートワークス研究所が「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」という非常に興味深いレポート発表しました。そのなかで「ドライバーがいないために、荷物が届けられない地域が発生(2040年のドライバー職・不足率予測24.2%)。『荷物が届くかどうか』が、人が住める 地域を決めるように。日本の4分の1の地域は事実上、居住不可能に」と警鐘を鳴らしています。皆さんが考えている以上に、物流業界の人不足や低い生産性は深刻な課題で、何とかしようと皆さんが必死に努力しています。

「未来予測2040」に書かれた状況にならないように政府も物流企業もシンクタンクも必死に考えているので、4分の1が住めなくなるような未来は来ません。このレポートは、あくまで「物流の2024年問題」を放置したらこうなるという予測ですからね。

利用者は付帯サービスに対して料金を払っていない

――協業が進んで企業間の競争原理が働きにくくなることで、料金の値上げは考えられますか。

坂田 ヤマト運輸と日本郵便の協業で「ネコポス」は「クロネコゆうパケット」に移行しますが、運賃が20円値上げされるので値上げの影響は出ています。値上げしているのは運賃だけではないので、運賃の値上げは仕方がありませんが、荷主が運送の依頼をためらうほどの値上げにならないように業界各社ががんばっているのです。

――サービスが低下する懸念はないのでしょうか。

坂田 サービスの低下については「宅配業におけるサービスとは何か?」という問題に行き着きます。例えばSNSに「宅配便に玄関前の置き配を頼んだのに宅配ボックスに荷物を入れられてしまって、頭に来たので事業所にクレームの電話をかけて、宅配ボックスから取り出して玄関前まで持ってこさせた」という書き込みがあって、私は不愉快に感じました。あるいは「受け取り時間午前を指定したのに10分遅れて、それが3回続いたのでクレームを入れた」とか。宅配便のドライバーに聞くと、こうした話は「あるある」です。

 物流サービスの本質は、荷物を運びたい人から受け取る人に確実に届けることです。実際、スーパーが運送会社に商品の配送を嫌がられたなどの事例が発生しています。しかしサービス低下を心配する前に、時間指定や再配達などに対して、利用者は料金を払っていません。例えば再配達の有料化はあり得ることですし、むしろ有料化すべきだと思います。

 時間指定にしても1980年代までは有料でした。ところがヤマト運輸が1998年3月から「宅急便」の時間指定お届けサービスを始める時に、時間指定を無料にしてしまったのです。当時、佐川急便の法人向け時間指定サービスは、東京近郊で1個2000円、岡山県貨物は2000~2500円でした。ヤマト運輸に他社が追従したことで、時間指定は無料になってしまったのです。「物流の2024年問題」を考えれば、時間指定の有料化はあり得る措置です。再配達については、現在の再配達率12%を6%に引き下げることが政府の目標ですが、話題になっている「置き配ポイント」によるポイント還元よりも有料化に切り替えたほうが再配達率は下がると思います。

(文=Business Journal編集部、協力=坂田良平/物流ジャーナリスト)