その甲斐あって既存店客数は今年7月ごろから大幅に回復。追加策として、スシローは10月から12月末までの期間限定で、かつて回転ずしの代名詞だった「100円皿」を復活させている。ただ、それだけだと「客単価を落として安売りで客を集めている」という状況になってしまうが、実は既存店客単価は昨年10月から今年9月まで一度も前年同期比を下回ることなく、通期計で5%増となっている。なぜ単価を落とさずに客数を回復させられたのだろうか。
「消費者心理として、店を訪れると高めの商品であっても『一度試してみたい』という気持ちが湧いてきます。特に、スシローは期間限定、数量限定といった限定メニューに訴求力があり、思わず注文したくなるような商品を打ち出してきます。告知方法がうまい上に、味についてはこれまで築いてきたスシローブランドの信頼感がありますから、お客さんとしては『高い分だけおいしいはず』と安心して頼める。ちょうど値段的に納得感があって、許容できる範囲の価格帯とメニュー内容にしているのも、スシローの妙味といえます」(同)
それでも苦境にあることに変わりはないスシローだが、低価格から高価格帯まで幅広いメニューを出せるのは、再浮上に向けての大きな強みになるようだ。
「はま寿司のように『一皿100円(税抜き)』とうたっているような店舗をはじめ、他の競合チェーンはメニューの価格展開が限られていますから、高価格帯のメニューは出せません。その点、スシローは価格帯に幅があり、ご褒美的に食べたくなるような高価格帯の商品を自由に展開できます。低価格帯と高価格帯の双方で攻めることができるのは、スシローの大きな強みになるでしょう。スシローに限らず、回転ずしが今後発展していくためには、近年注目されている未利用魚(サイズが小さい等の理由で市場に出回らない魚)の活用なども含め、もっと多様な価格や商品を展開していくべきではないかと考えます」(同)
(文=佐藤勇馬、協力=重盛高雄/フードアナリスト)