そうした気候や消費者心理を見据えて店内展示を変えるのも大切だという。特にファッショントレンドは刻々と変化するので展示品にも目利きが求められる。
「浦和中尾店では浦和レッズのユニフォームも人気ですが、海外の人気チームも含めて年々デザインが変わります。昔のユニフォームが高く売れることも多く、特にチームがリーグ優勝やカップ戦で好成績を収めた年のものはプレミアム価格になります」
店名のトレジャーファクトリー(Treasure Factory)は直訳すれば“宝物の工場”だ。かつては掘り出し物を探しに来るお客も多かったが、現在はどうなのだろうか。
「今でも一定数おられます。例えば近隣にお勤めの方が1日2回、昼休みと退社後の夜に来店されたりします。新しい商材が入っていないか定点観測されるようです」
ところでネットには買取価格への不満を書き込む人もいる。それについてどう思うのか。
「当社は商材の市場価値や保存状態を見て査定していますが、昔に比べて総じて好意的な声が増えたと感じています。リユース品を個人売買する人も増え、取り扱いに対する理解が浸透してきたのではないでしょうか」
店舗販売は売れるまで商材の保管場所も必要で、さらにコストがかかる。その分は買い取り(仕入れ)価格に反映させることに対して納得感が得られたということだろう。
市場拡大の追い風となった理由はいくつかあるが、最も大きいのは「断捨離」ブームと震災や豪雨による「自然災害」被害だろう。これらを見聞きした消費者は昔に比べてモノへの執着心も薄れた。「そのうち使うかも」ではなく不用品の見切りも早くなったという。
「近年は新品に近い商材を売りに出される方も増えました。ご自宅で保管されるとどうしても経年劣化してしまいます。希少性や市場性との関係もありますが、状態がよい品は高値で取引される可能性が高まります」
創業間もない時期は10万円の家具が大型案件だったが今や桁が違う。今年は個人宅に出張買取したサントリーウイスキー「山崎50年」(2007年販売分)が4000万円(取引時の時価)で売れた。
「近年評価が高いジャパニーズウィスキーの中でも『山崎50年』は希少性があり、オークションに出品されるほどです。2005年、2007年、2011年と過去3回にわたり本数限定で販売されてきました」
2007年は50本限定で販売されて当時の希望小売価格は100万円。ウイスキーは熟成期間が長いほど、まろやかで芳醇な味わいになるとされ、50年熟成は世界的にも珍しい。
「未開封品で付属品も完備していたのでこの価格で販売できました」と話す野坂社長。お客の自宅に出向き、家具など他の品と一緒に査定・買取したという。
「『山崎50年』は未使用品の国内販売でしたが、海外でも日本人が使った品、日本のクオリティで見極められた品は“ユーズド・イン・ジャパン”“チェックド・バイ・ジャパン”として評価が高いです。モノを大切に使い、日本人の厳しい目で判断された品として、国内では需要が高くない木製のタンスも親日国であるタイや台湾では人気です」
一方、業界全体では参入業者が増えた結果、課題も出てきた。例えば加盟店募集に応募した未経験者に対し、開業資金を徴収した後にきちんと技術指導や運営支援しているか、という話も聞く。
ここまで拡大した市場だからこそ、売り手と買い手、本部と店舗との関係性もますます重要となってくるだろう。