例えば今のスキーリゾートにある「私の不満×機能の不満」なら「レンタルスキーウエアがださい」「家族で遊ぶところがない」といくらでも挙げられるし、「まわりの不満×機会の不満」なら「学生にはリフト券が高すぎる」「英語がスタッフに通じていない」、「社会の不満×気分の不満」となると、ニセコのように「海外の企業がメインで開発しているが日本は大丈夫か?」「地価が上がっても地域の人に還元されない」などが出る。
どれを解決すべきなのかは、開発主体が地元企業なのか外資系企業なのか自治体なのかでも変わってくるが、まずはこの「不満ビンゴ」で「不」を洗い出すと、すべての不満が見える化され、本質的に解決しなければならないアイデアの方向性がクリアに見えてくる。
不満ビンゴはアイデアの準備運動に最適。
眠っている課題を掘り起こし、俯瞰して見よう。
不満のフィールドワークに出よう。街には、新商品・新サービスの種が眠っている
ビジネスと不満の関係について、もう少し深掘りしてみよう。まずはいま手元にあるスマホの画面を見てほしい。僕の画面には例えばGoogle やNetflix やSuica やLINE、ニュースやお天気アプリなどが並んでいるが、それらを「不」という視点で見てみると、そのどれもが「不満」や「不便」から生まれていることがわかる。
部屋を見回しても、通勤途中の街を見回しても、「不」を解決したアイデアで溢れていることがわかるだろう。「不」というメガネをかけて街を見ると、不とビジネスの関係がいかに深いかに驚くと思うし、そんな視点で今の自分の仕事をチェックするだけでも、違う風景が見えてくるはずだ。
ある飲料メーカーにこの話をしたところ、早速やってみようということになり、チームでコンビニに出向き、飲料の棚を見ながらいろんな「不」を洗い出してみた。
すると、たった10分ぐらいで出るわ出るわ……コロナ禍だったこともあり、取っ手が不潔とか商品が少ないなどの不便から、文字が小さいから見にくい、冷蔵の棚が曇るなどの不満までさまざま。一番多いのは、欲しい商品がない、容量が大きくて重すぎるなどの機能面の不満だった。
その後チームで街を歩き、飲む場所への不便や自販機への不満を集め、さらに大きな社会の不満も拾い集め、それらを不満ビンゴ(図参照)の9つの枠で整理した。
机上で考えず、現場で不満を拾うことから始める。僕たちはこの「不満のフィールドワーク」を通じてまさに「不満は現場で起こってるんだ」と実感し、これこそがリアルに求められている開発だと認識した。
さて、ここまで話しても、不満をベースに開発するのに抵抗がある企業や人がいるのも事実。前述のように、日本は「不満」を毛嫌いする文化があり、不満を言う人を避ける傾向がある。
社外取締役をやっている友人が「世の中の不満や社内の不備をまっ先に指摘する役割なのに、それを言うと煙たがられてしまう」と嘆くほどだから、社員が「不満」を言うなどご法度な空気なわけである。
だが、不満は大切な未来の種なのだから言うほうがいい。そこでおすすめなのは「不満を言ったら同時にアイデアを言う」こと。セットにすると、意外なほど議論が前向きになりビジネスのファインディングス(気づき)も生まれやすくなる。
さらにみんな「ここが問題だけどこうすればいい」という解決話が好きだから「あの人は面白い話をする」と言われるようにもなる。これは嬉しい副産物だ。
実は中学生向けの「アイデア講座」で、「不満+アイデア」で話すようにすすめたら、みんながとても笑顔になりクリエイティブになったこともある。まさに教育にも応用できる思考ツールなのだ。
「不満+アイデア」のセットで話せば、ビジネスは加速し、「面白い人」と呼ばれる。