スポーツベッティングサービス「TIPSTAR」が昨年度に通期で黒字化を達成して、利益規模はもっと大きくなるだろう。子どもの写真・動画共有アプリ「みてね」は会員規模が非常に大きいので、マネタイズを進めてなるべく早く黒字化したい。
長期的にはコミュニケーションを豊かにするサービスを届けていきたいと思っているが、まだ道半ばだ。やりきれていないことはたくさんある。スポーツも規制が緩和されれば、イノベーションが起きる余地がある。
――想定以上にモンスト一本足からの脱却に時間がかかっている原因はどこにありますか。
人的リソースや資金の選択と集中をやりきることができていない、あるいは少し時差ができるという部分はあった。
モンスト本家に再注力しようという戦略転換も、自分が昨年執行役員になってからだ。「任せるのでこれを立ち上げてくれ」という(現場にリソースの使い方を委ねる)のでは、やりきれていなかった側面はあったかもしれない。
――モンストという、稼げている事業があるからこその難しさがあった。
それはある。モンストで生まれたキャッシュフローをゲーム領域以外に再投資するとなると、合意形成が取りづらい。
そこで期待しているのはAI。まだこれからだが、組織が拡大するにつれて偏在した情報をAIで一元化して理解しやすいようにサマライズできれば、意思決定の速度が上がっていく。
――株価はインド展開の方針を発表した2024年3月期決算後に急伸し、4年ぶりの高値をつけました。ただ、モンストが急成長した2017年に記録した過去最高値(7300円)と比べると、半分以下の水準です。
ゲーム企業に対する評価を分けているのはグローバル化しているかどうか。当社が高い評価を得るためには、きちんと外貨で稼げる企業になる必要がある。
日本のIT企業では、海外投資は短期的に利益率を押し下げるとして投資家から好感されない時期があった。ゲームを含むインターネットサービスのマーケットを見渡しても、日本、アメリカ、中国の三大市場以外はあまり育ってきていなかった。それでなかなか海外投資に踏み込めていなかった。
やっと「インドが来そうだぞ」という雰囲気になっている中で、私たちがインド展開を発表したことで少し評価され始めている。インドは「来る来る詐欺」と言われているが、今度は本物じゃないかなという個人的な実感もある。
また、勇気を与えてくれたのが「みてね」だ。もうすでに海外のユーザーのほうが伸びは大きくなっており、私たちのサービスを磨いていけば海外の方でも手に取ってくれるということは、大きな自信になっている。