作家も悲鳴、KADOKAWA「サイバー攻撃」の深刻度

また、現時点では新刊の配本については通常の運用を維持しているものの、国内の紙書籍や電子書籍の編集・制作支援システムも一部停止していることから、今後は一部の新刊の刊行や重版制作が遅延することが見込まれるという。

停止が長引くほど現場の混乱も拡大

出版事業において、どれだけの損失が発生するかは現時点では不透明だ。ただ、システムの停止が長引くほど、書店での欠品による機会損失は膨らみ、制作現場の混乱も拡大する。

SNS上では「サイバー攻撃で特設サイトが閲覧できない」「発売1週間が勝負と言われており、私達には死活問題」などと、直近で新刊の発売を予定している作家から売り上げへの影響を懸念する声が相次いでいる。今後、こうした作家への補償が発生する可能性もある。

攻撃を受けたデータセンターには経理システムも含まれていたことから、一部の取引先に対して支払いの遅延が生じる可能性も見込まれるという。KADOKAWAは、経理機能と出版事業の製造・物流機能の正常化を最優先の取り組み事項として位置づけ、6月末をメドに復旧を目指している。

折しもきょう午後には、「ところざわサクラタウン」(埼玉県所沢市)で定時株主総会が開かれる。KADOKAWA株の6月17日終値は2851.5円と、サイバー攻撃を受ける前の6月7日終値(3365円)から約15.2%下落している。

KADOKAWAは、サイバー攻撃による2025年3月期業績への影響は現時点で不明としているが、この点に対する株主の不安は当然大きいだろう。経営陣の口から具体的な説明があるのか、多くのステークホルダーの注目が集まる。