ECビジネスで成功する人・失敗する人の決定的差

ここで重要なのが、顧客1人あたりの経済性を示す「ユニットエコノミクス」が成立しているかという観点です。

ユニットエコノミクスは、売上LTV、販売原価の合計、CPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)で構成されており、売上LTVから販売原価の合計とCPAを引いた数字が1人の顧客から得られる粗利になります。

まず、このユニットエコノミクスが成立している状態をゴールとして目指します。これを維持できるようになれば、あとは顧客数を増やしていき、顧客あたりの売上が積み重なっていくことで事業全体の売上を作っていくことができます。そこから人件費などの販売原価以外のコストが引かれますが、これがうまく回るようになれば利益が出るという構造です。

また、PL(損益計算書)におけるマーケティングコストの構成比の高さについても認識すべきです。商品原価や配送費など、ECで売上を作り出すのに必須なコストは重く感じますが、圧倒的に重いのはマーケティングコストであり、ここが成果として適切に返ってくる状態を作れるかどうかが競争力の重要なポイントです。

D2Cの収益構造
(画像:『LOCAL GROWTH 独自性を活かした成長拡大戦略』より)

ECで買ったお客様を逃がさないために

自社ECにとっていちばんの課題は、集客です。まずはお客様にサイトを知ってもらわないことには、売り上げにつながりません。お客様が自分で検索することでサイトを訪れることもありますが、それを待っていても安定した売り上げにはなりません。

集客のためにはさまざまな施策がありますが、取り組みやすいのはSNS広告です。FacebookやX、Instagram、TikTokの広告を活用して認知を図り、コスト管理を最適化していくことが必要になります。

ただ、近年では、広告を使ってお客様に知っていただくことと同時に、一度サイトに来ていただいた方ににファンになってもらうことが大切になっています。

これだけ消費があふれている時代に、自分たちの商品にたどり着いてもらうチャンスは限られています。CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)やLTVというように、1回買ってくださったお客様を逃がさず、しっかりと自分たちの良いところを感じていただき、長く使っていただくことが必要です。

直接的に商品を売ることを優先してしまうと、広告やサイト上の訴求がどうしても押しの強いものになってしまったり、脚色してしまったりすることもあります。そのメッセージに違和感があれば、お客様が離脱する可能性が高くなります。

お客様を育てていくための施策には時間がかかりますが、継続的な成長のためには欠かせません。特にこれからの時代はその傾向が強くなります。

世の中には、同じようなものがあふれています。たとえばボディーソープを買おうと思えば、どれを選んでいいのかわからないくらい、たくさんの商品があります。よりきれいになるもの、いい香りのするものを選ぼうと思いますが、機能面ではそんなに大きな差はありません。

ECでモノを売るためにすべきこと

そうした中で世の中で求められるのは、機能的価値から情緒的価値に移行しています。

その商品を消費することで、どんな気持ちになれるのか。それがほかの商品では得られない価値になります。消費者はみな、コンビニやドラッグストアに行っても買えない、あるいは買わないものを探しているのです。

では、何が情緒的価値を生み出すのかといえば、その企業や商品だけが持つ世界観です。ボディーソープであれば、忙しい日常の中で、少しほっとできる時間を過ごすためのものだと打ち出す。それをビジュアルや言葉で表現することで、消費者の共感を引き出します。