ここでいう〔定数〕とは、自身が持っているアセット、つまり取り組んでいる事業(サービスやプロダクト)のこと。私の場合は「ホテル」、Sleepy Tofuの場合は「マットレス」が該当しますね。
それに対して、〔変数〕とは掛け合わせてみるもののことを指します。アイデアは、この〔変数〕に何が放り込まれるかで決まります。
例えば、Sleepy Tofuのケースでは、〔変数〕に「食事」を入れて、〔マットレス×食事=寝ながら食事ができる〕というアイデアを切り口にして、「寝転がれる台湾料理店」という企画を導いています。つまり、アイデアを発想するということは、なにを〔変数〕の箱に放り込んだら思わぬ化学反応が起きるかを考えること、と同義であるともいえるでしょう。
では、実際〔変数〕に放り込む要素はどう考えていくか?
もちろん、思いついたものをどんどん放り込んでいってもいいのですが、はじめのうちは、自分だけでは気づきにくい視点に出会うために、次のようにカテゴリー分けしてキーワードを洗い出していくと、網羅的に考えやすいでしょう。
カテゴリー内に入るキーワードをブレーンストーミング的に書き出していきながら、例えば次のように、気になるワードを〔定数〕と組み合わせてアイデアを発想していきます。
この時点ではまだアイデアの質は玉石混淆かと思いますので、凡庸だな、ピンとこないなと思ったものは気にせず脇に置いておきましょう。
この中で、キラッと光るものがあるなと感じた組み合わせやアイデアがあれば、さらにいくつかの具体的なアイデアへと広げることができないか考えてみます。
例えば、〔ホテル〕×〔犬〕なら、
といった具合に、深掘りして考えてみると、どんどんサービスのアイデアが生まれてきます。
このように、掛け合わせから連想を続けていくと、すぐに実現できそうなものから、フィジビリティが低そうなものまで、いろいろな精度のアイデアが入り混じった状態で発想が広がってきます。
ここで一つひとつのアイデアを練りすぎたり、焦ってボツにしたりする必要はありません。一見微妙に思えるアイデアだとしても、それが最もフィットする状況が訪れることもありますし、少しアレンジすることで光り出す可能性もあるので、無駄にはなりません。
最初のうちは、なかなか手応えのあるアイデアが出てこなくて嫌になってしまうこともあるかもしれませんが、この思考法を続けていくと、段々とアイデアを発想するための思考回路ができてきます。
これは、草むらに獣道をつくっていくプロセスと同じです。初めはなかなか見通しが悪く、迷子になってしまうこともあるかもしれませんが、何回も繰り返すうちに、うっすらと足跡が見えるようになってきます。回数を重ねていくことで発想のセンスが磨かれ、やがてはっきりとした道筋となり、スピーディーに前に進むことができるようになるのです。