といった、数学の記述でよく使われる、論理を表現するコトバのことです。
もしよろしければかつて学生時代に活用した数学の参考書、あるいはいまご家族が勉強で使っている教科書を開いてみてください。数式はもちろんですが、その間にたくさんの数学コトバが使われていることに気づくはずです。
もちろんこれら以外にもたくさんありますが、数学とはこのようなコトバを使い、物事を論理的に説明していく学問です。
極論、数学は数を使わなくてもできます。しかし数学コトバを使わずに数学をすることはできません。多くの人はこのことに自覚的でないのですが、実は数学の主役は数ではなく、数学コトバなのです。
「頭がいい人」は例外なく、このような数学コトバを使います。先ほど挙げた例は、次のような役割を持っています。
「なぜなら」を使わないということは、根拠を言えないということになります。根拠を言えない人がビジネスで成果を出しているか。もちろん否でしょう。
「さらに」を使わないということは、浅い話しかできないということになります。そんな人がビジネスで成果を出しているのでしょうか。おそらく否です。
つまり、「頭のいい人」は例外なく、このような数学コトバを使っているのです。
ご紹介した数学コトバのうち、とりわけ注目してほしいのは「一方で」です。
これまでさまざまなビジネスパーソンを研修の場で指導してきましたが、成果が出ていない人は、「一方で」というコトバをまったく使いません。そして、成果が出ている人は、「一方で」というコトバをよく使うのです。
「一方で」は、違う視点を持ち込むために使うコトバです。
自分自身に「一方でこっちの視点は?」と心の中で問いかけ、その問いかけに自分なりの答えを言語化できているからこそ、「一方で」というコトバを使うことができます。
これは、物事を多角的にとらえようとしている何よりの証しと言えます。正解のないビジネスの世界で答えを出し、成果に結びつけることができる人とは、まさにこのような、物事を多角的にとらえられる人ではないでしょうか。
多数の研修の経験から、ビジネスパーソンは簡単にできることをやろうとせず、難しいことばかりチャレンジしようとする傾向があるように感じています。
DXの推進。生産性の向上。新規事業の開発。どれも大事なことでしょう。一方で(!)、とても難しいことでもあると思います。
まずはもっと簡単で、誰でもすぐにできることから見直してみてはいかがでしょうか。たとえば使うコトバを変えてみる。誰でもすぐにできることだと思います。
そのような変化の積み重ねが「成果を出せる人」への近道であり、DXの推進、生産性の向上、新規事業の開発といった難題をクリアすることにつながるのだと思います。
さて、本記事の序盤のAさんとBさんがかわした会話を思い出してみてください。Bさんの発言は、決して「頭がいい」といえるものではありませんでした。
それでは、この記事の内容をふまえて一種の模範解答をご提示します。
Aさん スキルアップのために、何が重要だと思いますか?
Bさん 英語のスキルアップについてお話しします。英語力向上には、「質」が重要だと考えています。一方で、「量」が大切だという視点もあるので、英語のスキルアップには集中できる環境と、十分な勉強時間が必要ですね。
いかがでしょうか?
先の例と比べ、スマートな印象があるのではないでしょうか。「一方で」というコトバを使うだけで、言いたいことの構造がわかりやすくなり、賢く見えるのです。
余談ですが、私がこれまでお会いしてきたビジネスパーソンの中で、「この人は話が簡潔でわかりやすいな」や「この人は頭がいいな」と感じる人物にはもっとわかりやすい共通点があります。
発言の最後に、必ずこう言うのです。
「以上です(以上になります)」
おそらく頭の中で、それはまるで数学のように、「証明」が終わっているのでしょう。今回の記事は、これで以上になります。