停滞するDeNA、「280億円減損で赤字」の正念場

今後はこのような土台を生かし、ゲームの開発初期段階からユーザーのフィードバックを取り込み、ブラッシュアップの方向性や開発継続の可否を判断するといった、低コストかつ低リスクの開発モデルを確立していくという。2022年度下期からアメリカ市場向けのゲームで試験的に導入しており、効果検証を進める。

DeNAは今回、ゲーム以外でもライブストリーミング事業とヘルスケア・メディカル事業で買収子会社などののれんの減損を計上しているが、足元の売り上げやユーザー数の推移などは悪い状況ではない。

89億円の減損を出したIRIAM社はVTuberアプリを展開しており、2021年に完全子会社化した。DeNAの岡村信悟CEOは2月7日の決算説明会で、「(IRIAMは)しっかりとコミュニティが形成されていて、確実にサービスの基盤を作ることを大事にしていく。マネタイズやユーザー獲得施策は当初計画よりも丁寧に進めており、業績面では時間を要している」と説明した。

今のDeNAは球団頼みの状況に

もっとも、今は両事業とも育成中の段階にあり、本格的な利益貢献には時間がかかる。

ライブストリーミング事業の今期第3四半期累計のセグメント利益は4億円。ライブコミュニケーションアプリ「Pococha」のアメリカでのサービスを終了するなど、収益改善策を進める。先行投資が続くヘルスケア・メディカル事業は、来期に50億円の黒字転換を見込む。

こうした状況下で、今のDeNAにとって頼みの綱は、横浜DeNAベイスターズなどのスポーツ事業(第3四半期累計のセグメント利益は44億円)となっている。

長年柱だったゲーム事業の低迷により、DeNAの全社売上高は10年前から3割以上減った。当時は40%近い営業利益率を誇っていたのに対し、前期実績はわずか3.1%。明確な“次の柱”を打ち出せずにいるDeNAへの市場の評価は厳しく、2月27日終値ベースでのPBR(株価純資産倍率)は0.67倍と、東京証券取引所が改善の目安とする1倍を大きく下回っている。

今回の減損処理で膿を出し切り、再成長へと舵を切ることができるのか。ゲーム事業のボラティリティーを抑えつつ、いかに安定した収益柱を構築できるかが問われる。