「いますぐ手放すのは難しい、でも何かしら、キリのよいところまで、メドがつくまで……」
そう頑張り続けてしまう人は珍しくありません。
そんな人は、無理・無駄が手放せない自分を変えよう、手放せる自分になろうとしているのだと思います。そんな考えや努力は素晴らしいものですし、心から尊敬します。
しかし、自分を変えようとする際に最もよくない方法は、「自分の気持ちを変えよう」と頑張ることです。
「自分で自分の心を変える」のは、どれほど精神力が強い人にとっても、たやすいことではありません。
自分を変えるために最も効果的なのは「頑張り」という精神論ではなく「技術」(テクニック)をうまく使うことです。
人の手を借りずとも、自分以外の力をうまく利用する方法はたくさんあります。
一例として、最も多いお悩みのひとつ、「無理・無駄な人間関係の手放し方」についてお伝えします。
わかりやすい例として、職場の人間関係で悩んでいるケースを取り上げます。
職場でのつきあいは「手放しにくい」点がやっかいです。
仕事を進めるにあたり、お願い事をしたり、されたりすることは避けられません。
だから「気が合わない」「なんとなく苦手」という理由だけでは、距離を置きにくいものです。
職場では全員と友好的な関係を維持する必要があります。
そんな状況下でお勧めしたいのは「役者になって過ごす」という解決策です。具体例をお話ししてみましょう。
私の友人に「社交的だけど、人づきあいは好きではない」という人がいます。
そんな彼女が社交的に振る舞えるのは「その都度、誰かになりきったつもりで、人と接しているから」だそうです。
これは大変うまいやり方です。
単純に思えるかもしれませんが、この効果は絶大です。
彼女の場合、なりきる誰かとはテレビで見かける有名人だそうです。
場を明るく楽しませたいときには、あのお笑い芸人に。
ママ友同士で盛り上がりたいときには、辛口だけど嫌味のない、あの文化人に。
仕事で皆の意見に理解を示しながらリードしたいときは、あの有名司会者に。
結局は自分であることは変わらないのですが、この方法は驚くほど、心の負担を軽減してくれます。
いい人や真面目な人ほど、一言の言葉を発するにも自分の責任を、未来への影響を、未来の結果を気にかけてしまいがちです。
でも「人気者のあの人ならこう言うだろう」と気持ちを切り替えれば、心はラクになるものです。
自分の考えをストレートに伝えたり、本心を明かしたりする必要はありません。
「他の人格を演じる」という処世術を使えば、逃れられない人間関係の中で、できるだけ自分を守りながら、うまくやり過ごせます。
2つ目は、利害関係のない場、たとえば趣味の教室など「離脱しやすい場」の人間関係の手放し方についてです。
「この人間関係は失ってもよい」という気持ちがわいてきたら。
無理・無駄を感じたら、そこから卒業してしまいましょう。
「でも、少し寂しくなってしまいそう」と心配なら、自分の成長のためにも、別の仲間を探してみましょう。
まったく別の領域で人間関係を新たに築いてみればいいのです。
新しい環境に飛び込んで、そこで視野を広げてみるのです。
するとそこへの好奇心が大きくなるため、「失ってもよい人間関係」について悩む時間は激減します。
たとえば、新たな趣味や習い事を始めてみるのもいいでしょう。
ヨガ教室に出かけて体を動かすのでも、スポーツジムに通うのでも構いません。
これまでの生活圏とは違った人たちと、新たな関係ができるはずです。
「コミュニケーションをとるのが苦手」という人でも、趣味や習い事に通う人たちとは目的が共通しているので、ラクに程よい距離感でのおつきあいができます。