マウンティングする人に限って「できないこと」

ついつい、いい格好をしたくなりますが、実はそちらのほうがかっこ悪いといえます。

そもそも、自分が気にするほど、周囲は他人の無知を気にしてはいません。どんなに初歩的なことを聞いても、誰もバカになんてしないのです。むしろ、頼られて気分がよくなるのか、喜んで教えてくれるものです。

自分が知らない・できないという事実を曝け出そうとすると、怖いとか恥ずかしいという感情が出てきます。それでも、その殻を打ち破らなくてはいけません。「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」という諺があるように、ちょっと恥を忍んで分からないことをその場で教えてもらうほうが、後々恥ずかしい思いをせずにすみ、得られるものは大きいのです。

自分より優秀な人がいるという幸運に注目

リスキリングをするうえで、次にやらないほうがよいのは、「マウンティング」です。

「マウントを取る」とは見栄をはって相手よりも自分のほうが優位だと見せつけるような言動を指します。知ったかぶりもそうですし、学ぶ過程において「自分はこれくらいできている」と、相手との差をことさらに強調するなどの行為もあります。

リスキリングは学校の勉強や試験とは違います。人との優劣を競うようなことではなく、あくまでも自己変革です。そこで他の人を気にしても意味がありません。確かに自分より、仲間が先行しているとよい刺激になりますが、そこでやるべきことは自分がもっと効率的で効果的なやり方を教えてもらうことです。自分のほうが優れているとマウントすることではありません。

自分より優れた人がいるなら、ラッキーだと思いましょう。そこでマウンティングをしても、「この人は何を言っても無駄だ」と思われて、相手から距離を置かれてしまいます。

そんなことをしていては、キャリアアップは遠のくばかりです。目指すことは効果と効率のよいリスキリングだと思えば、見栄や一時的な優越感を得たいという欲望などに惑わされず、何が一番よいやり方なのかは自ずと見えてきます。

マウンティングは過去に成功体験を持つ人が陥りやすいので注意しましょう。過去の、ある状況下で優秀だった自分に固執し、それを誇示したくなるわけです。新しい領域で、できない自分を認められないために「いや、私は本当はすごいんだ」と言いたくなってしまう心理があります。私自身も新しいことを学ぶ際に、マウンティングしたくなる心理になることもありました。

「ちょっと教えて」で成長が加速する

ある時、自分よりあとからその領域について学び始めた人に、気がついたら追い越されていたことがありました。できないこと自体がかっこ悪いのではなく、早くできるようになるために最短ルートをとらないことが、かっこ悪いのだという気づきを得ました。

ついマウンティングしそうになって「私は……」「俺は……」と言いたくなったら、それをぐっとこらえて、「ちょっと教えてもらえると嬉しいんだけど……」と口にしてみてください

私はこれを口癖にするようになってから、学びの取れ高が倍以上になっただけでなく、スピードも速くなり、信用も得られるようになりました。自分で調べるよりも聞いたほうが早いですし、この人は変な見栄をはらないと思われれば、相手も気持ちよく情報を提供してくれます。

私がこれだけ「自分が勉強していることをオープンにすると、メリットがありますよ」と言っても、なかなか実行に移せない人もいます。オープンにするということは、周囲の指摘や批評の目にもさらされます。すると、どうしても打たれることを恐れてしまうのです。

ここは覚悟が必要です。リスキリングでは、打たれることを避けて通ることはできません。 黙って一人で身につけた知識やスキルでは、みんなにオープンにして叩き上げられたスキルや知識に絶対にかなわないからです。より仕事ができる、より稼げるのは後者です。