任天堂「eスポーツ大会」の対応表明がもたらす恩恵

多くの団体が開催してきたゲーム大会はすでにコミュニティーであり、複数の運営者からなる団体であることからガイドラインに当てはまっていません。『大乱闘スマッシュブラザーズ』界隈では「ウメブラ」や「スマバト」など、『大乱闘スマッシュブラザーズ』の省略したゲームタイトルが入っている大会もあり、大会名にゲームタイトルもしくはゲームタイトルを省略したものを使うことを禁止しているところに抵触します。

参加人数の上限を超えているものもあります。任天堂以外のオンラインのeスポーツ大会では、優勝賞品としてアマゾンギフトカードを提供しているところもあります。これらの状況から、これまで開催されてきたコミュニティー大会も開催ができなくなってしまうのではないかという懸念や臆測が広がっている状況です。

今回のガイドラインは「画期的」

しかし、今回のガイドラインは厳しく取り締まるためではなく、これさえ守れば自由に大会が開けるというかなり緩めのものだという見方もあります。

「ウメブラ」の運営の1人として関わっているアユハ氏によると、ガイドラインが発表された後で、すでに多くの団体が任天堂に開催申請を出しており、そのほとんどが認められているそうです。

「今回のガイドラインが発表されたときは、ネガティブに捉える人が多かったのですが、今ではポジティブに捉えられる人が多いようです。今回のガイドラインが画期的だったのは、ガイドラインに書かれていることを順守すれば、大会の開催を任天堂に申請しなくてもよいということです。ガイドラインから外れてしまったものに対しても、申請をすれば開催できるか判断して貰えるわけです」(アユハ氏)

ガイドラインの存在は「ここに書かれている以上のことはできません、認めません」というものではなく、書いてあることを順守すれば完全にホワイトで、それ以外は完全にブラックになるのではなく、グレーゾーンとし、その部分は個別で相談に乗るという話だとアユハ氏は捉えています。

そういう解釈をすると、今回のガイドラインはかなり緩めのものだと言えるでしょう。以前、任天堂はゲーム実況やゲームプレイの動画配信についてのガイドラインも公開しましたが、こちらも個人向けのガイドラインはかなり緩めと言えるものでした。

「われわれが主催しているのは『大乱闘スマッシュブラザーズ』の大会ですが、われわれ以外にも多くの団体が主催しています。その中で今回のガイドラインに当てはまらないと思われる大会を主催している団体は国内に12もありました。そのほとんどが任天堂に申請をし、許諾を得ています。われわれの「ウメブラ」も大阪の「スマバト」も大会名をそのまま使用することも許諾されています」(アユハ氏)

地方活性化のための利用は厳しくなった

当然、営利目的での開催や賭博行為、公序良俗に反するものなどは申請しても許諾が下りないことは明らかですが、ガイドラインに少しでも抵触してしまうと開催できなくなるという話ではないということです。

『大乱闘スマッシュブラザーズ』のコミュニティーの老舗である「ウメブラ」は、今後も大会名に使用できることとなった(写真:@darimoko)

とはいえ、ガイドラインの表面だけ取り繕って開催することもできません。例えば、観光地や商店街の集客が目的ながら、個人での開催を装って行うことも認められていません。

任天堂のタイトルを使用してeスポーツ大会を開き、イベント興行を成り立たせたり、地方活性化として利用することを考えている企業や地方自治体にとってみれば、厳しい結果になったと言えなくもないですが、個々のゲームを楽しみ、同志を募って一緒に遊ぶ、競い合うコミュニティーにとっては追い風と言えるでしょう。これをきっかけに、国内のゲームメーカーもガイドラインの策定をし、プレイヤーが安心して大会を開けるようになることを期待したいところです。