年収1000万円でも余裕ないのは税負担増えたから

一方で、世帯年収1000万円以上の共働き夫婦は、情報感度や購買力の高さから「パワーカップル」と呼ばれることがあります。「パワーカップル」という言葉からは、気力・体力に溢れた、金銭的にも精神的にも余裕のある共働き夫婦の姿が浮かびますが、当事者に聞くと、その実態は言葉が持つイメージとは懸け離れているといいます。

共働きでの育児には、職場にアクセスの良い住居にかかる住居費や、仕事中に子どもを預けるための保育料、日々の家事をこなすための家電製品の購入やサービス費用などの金銭的負担はもちろん、精神的・肉体的負担という意味でも相当のコストがかかります。キャリアを重視し、仕事が好きで働いている人もたくさんいますが、一方で家計のためにやむなく共働きをしている人も一定数いるのが現実ではないでしょうか。

都市と地方、生活費は本当に違う?

生活の負担感は、物価の安い地域に住めば抑えられるかもしれません。感覚的に、都会は地方に比べて物価が高いと想像が付くと思いますが、実際にはどれくらい違うものなのでしょうか。

地域別の消費者物価指数をみると、最も高い東京都区部(105.5)と最も低い前橋市(96.1)では10ポイント近い差があります。地域差の要因の大部分は家賃などの住居費ですが、教育費や娯楽費、食料、家具・家事用品などの生活費目が、東京都や神奈川県などの都市部では総じて高くなっています。

とりわけ首都圏では、不動産価格が高騰して住居費の負担が重くなっていますが、住居費の高い地域では生活費もかさむことがわかります。

夫婦と子ども2人の4人家族で生活する場合、東京都区部では物価水準が比較的安いといわれる東京都練馬区で賃貸住まいというモデルケースでも、子どもが幼児と小学生の場合で年間648万円、大学生と高校生なら年間964万円が最低でもかかるという試算もあります(東京都最低生計費試算調査結果)。

習い事の料金は2倍の差

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習い事の費用で比べてみても、都市部とそれ以外での差は顕著です。たとえば、幼児の習い事としてはダントツで人気の水泳教室ですが、ある全国チェーンのフィットネスクラブにおけるスイミングスクールの「幼児クラス・週1回」の料金を比較すると、港区にある教室では月額1万6000円以上なのに対し、地方都市では月8000円弱と実に2倍もの差があります。

別の大手学習塾チェーンでも東京・神奈川とそれ以外で月謝に差が付けられています。同チェーンの教室で、提供されるサービスの質に大きな差があるとも考えられないため、おそらくは地価の差が月謝に反映されているということでしょう。

他の習い事を見てみても、総じて都市部になるにつれて月謝が高く設定される傾向にあります。東京都で小学生までの子どもがいる世帯の年収割合をみると、年収1000万円以上世帯は2017年度時点で21.2%で、4年前調査時に比べて増えているというデータもあります。

東京で子育てをするために必要なコストは年々高くなっていて、そのために必要な年収のハードルも上がってきているのかもしれません。