健康寿命を延ばす「無理しない思考法」

それでも同窓会には出たほうがいい――認知症の専門医が勧める理由

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同窓会に出ない勇気

「同窓会に出るな」という意見も、じつは結構あります。同じ話ばかりになって、意味がないから、というのが理由です。
どうせ会うならまったく新しい人、知らない世界の人にすべきという意見ももっともだと思います。

しかし、年齢とともにそれさえ面倒になってくるものです。 
人間というのは、年齢とともに行動範囲が狭くなっていきます。老化とは、行動範囲が狭まることとも言えます。
だからこそ、「せめて同窓会くらいは……」と思うのですが、それすら面倒になってきます。

どうせ外出するなら、新しいレストランで食事をするほうがずっと脳にはいいかもしれません。
新しい刺激にならなくなった同窓会は、きっぱりと忘れてしまうほうがいいかもしれません。
いつもの仲間と会うなら、限られた仲間だけで会うだけ十分でしょう。

生きるための外出もある

同窓会に行く意味がなくなってきて、遠方まで外出するチャンスはますます減ってくることになります。
そこで必要なのは、外出する他の理由を作っていくことです。

人間の祖先は食料を得るために、外に狩りに出かけていました。だから外出する理由など考える必要はなかったのです。生きるために必要なことだったのです。

老夫婦だけの生活をしていると、同じようなことが起きてきます。
私の外来に来ている患者さん夫婦では、奥さんが先に亡くなってしまうケースは、決して珍しくありません。女性のほうが長生きと言っても、逆のこともあります。

そうなってくれば、遺された旦那さんは、自分一人で食料を買いに行かねばなりません。こうして、生きるために外出するようになるのです。
ネットで食料も買えると思うかもしれませんが、高齢者の方はそれが一人ではできないのです。自分で無理してでも、買い出しに行く、それが現実なのです。

同窓会に行こうか行くまいか迷うということなら、逆に言えば、まだまだそれだけ元気ということかもしれません。

しだいに人に会う本当の意味がわかるようになる

話が大きく脱線しましたが、同窓会に出るべきか、出ないべきかの話に戻しましょう。

同じメンバーしかいないから、同じ話しかしないから、同窓会に参加すべきではない。その意見ももっともだと思います。
そのデメリットがあるのを見込んだうえで、それでも同窓会には出るべきだと考えています。

一人で家にこもってしまうようになると、一日だれとも話をしないことも珍しくなくなってきます。
人に会っていたからこそ、脳を刺激して、新しい感動も得ることできていたのです。
外出してだれかに会う、それができるかどうかが、あなたが外部とのつながりが持てるかどうかなのです。
友人は大切なものです。若いときの時間を共有したという経験は、代わるものがないのです。

同窓会という大げさなものはやめるとして、二人同窓会と称して、二人だけで食事をするならできるでしょう。人数が増えると日程の調整も面倒になってきて、先送りされてしまうことが多いのです。

すぐに日程が合う仲間一人か二人となら、今日にも会えるでしょう。
もうそれで十分なのです。
見栄も張らず、いつもの同じ話でもいいのです。外出して人に会うという大切さを維持していきましょう。

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プロフィール

米山公啓
米山公啓

1952年、山梨県生まれ。聖マリアンナ医科大学医学部卒業、医学博士。専門は脳神経内科。超音波を使った脳血流量の測定や、血圧変動からみた自律神経機能の評価などを研究。老人医療・認知症問題にも取り組む。聖マリアンナ医科大学第2内科助教授を1998年2月に退職後、執筆開始。現在も週に4日、東京都あきる野市にある米山医院で診療を続けているものの、年間10冊以上のペースで医療エッセイ、医学ミステリー、医学実用書、時代小説などを書き続け、現在までに300冊以上を上梓している。最新刊は『脳が老化した人に見えている世界』(アスコム)。
主なテレビ出演は「クローズアップ現代」「世界一受けたい授業」など。
世界中の大型客船に乗って、クルーズの取材を20年以上続けている。
NPO日本サプリメント評議会代表理事。日本老年医学会特別会員。推理作家協会会員。

著書

80歳でもほどよく幸せな人はこういうふうに考えている

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