――さらに高橋投手について伺います。ホークス戦では、立ち上がりからコントロールが定まらず、初回だけで3つのフォアボールを与えています。
髙津 初回、先頭打者の周東佑京選手に内野安打を打たれました。そして、二番の今宮健太選手の初球が、ポンと高めに抜けたんです。その初球を見たときに、「えっ、このバランスの悪さは何だ?」と感じたことを今でもハッキリと覚えています。
――それは、ベンチから見ていてもハッキリとわかる「異変」だったのですか?
髙津 わかりましたね。マウンドからベンチはもちろん距離があるので、近くで見ないとよくわからないことはたくさんあります。もちろん、「高めに浮いた」とか「ワンバウンドになった」とか、その程度なら誰でもわかります。でも、あのときの初球に関してはあまりにもバランスが悪くて、「その投げ方をしていたら、そのバランスとタイミングなら、そりゃ、そこにいくよな」とハッキリわかるほどのボールばかりでした。
――試合後のコメントでは、「横から見ていて同じところにずっと行くので、ある意味コントロールいいなと思って。よくそれだけ同じところに投げられるなと思って見ていたんですけど、全部ボールでしたね」と語っています。
髙津 あの日はずっと、指にかかっていない、抑えきれないボールがずっと続いて、同じところに抜けるボールばかりでした。今宮選手の初球に感じた不安が最後まで続くピッチングとなりましたね。ランナーが俊足の周東選手だから、当然クイックをしなければいけない、バッターはバントの構えをして揺さぶってくる、いろいろな要素があったにせよ、あの1球は「あれ?」と感じさせる印象深い1球となりました。
――二軍監督時代からずっと高橋投手のことを見守っています。監督の本『二軍監督の仕事』(光文社新書)において、高橋投手のことを「じっくりと育てたい」と語り、「『俺がエースになる!』というオーラがハンパない」とも書いています。彼もすでに、プロ9年目を迎えています。なかなか思うように成長してくれないジレンマのようなものはありませんか?
髙津 さっきも言ったけど、彼の場合、何事にも一生懸命なんです。投げるだけでなく、打つことも、走ることも、何事においても一生懸命でガムシャラです。負けん気も強いし、根性もある。だけど、人間なので常にベストパフォーマンスを発揮できるわけではない。それがうまくいかなかったときに、ガタガタと崩れてしまう脆さ、不器用さもある。その点はいまだに変えてあげることができていません。悪ければ悪いなりに、というような応用が効くピッチングを覚えていかなきゃいけませんね。