「家族」というチームのつくり方

9割の人が知らない「家族の仲が良くなるカンタンな方法」

Getty Images

強いチームの定義
仲良しクラブで満足してはいけない

私は、強いチームの定義を2つの軸でお伝えしています。1つは「仲間同士の関係性」、もう1つは「目標の高さ」です。この2つの軸で、チームを見る必要があります。

チームづくりというと、チーム内の人間関係だけが良ければいいと思う人がいますが、それではうまくいきません。仲良しクラブが出来上がるだけです。強いチーム、勝てるチームにしようと思えば、「目標の高さ」の軸がとても重要なのです。チームの種類を、先に挙げた2つの軸によって4つに分類してみましょう。

①「関係性」も「目標」も低い組織        … 「烏合の衆」
②「関係性」はいいけれど「目標」は低い組織   … 「仲良しクラブ」
③「目標」は高いけれど「関係性」がよくない組織 … 「葛藤と混乱」
④「目標」も「関係性」も高い組織        … 「強いチーム」

この4つの分類を、まず頭に叩き込んでください。仕事において、あなたの組織は上の4つのいずれのチームになっていますか? そしてあなたの家族はどうですか?
ひとまずそれぞれについて解説します。

①「関係性」も「目標」も低い組織 … 「烏合の衆」
烏合の衆とは、カラスがあちこちを向いてバラバラでまとまりのない様子を表します。野球チームでいえば、誰も勝とうとしないし、やりたいこともバラバラでまとまらない状態です。

②「関係性」はいいけれど「目標」は低い組織 … 「仲良しクラブ」
関係性だけがいい状態を「仲良しクラブ」と呼びます。目標を下げて関係性を良くするのはカンタンな道です。「試合に勝たなくていいよ」「営業の目標は達成しなくていいよ」と目標を下げるので、様々な妥協が生まれます。飲み会に行っても、仲良く会話はできるのですが、目標の話は出てこないのが特徴です。

③「目標」は高いけれど「関係性」がよくない組織 … 「葛藤と混乱」
目標を高くすると、葛藤=ぶつかり合いや混乱が生まれます。野球で言えば、それまで「勝たなくていいよ」と目標を下げていたチームに、「やっぱり試合に勝ちたい」「全国大会に出場したい」というような高い目標を掲げると、何が起こるでしょうか。

・練習の頻度を変えなければいけない
・言いたくないダメ出しをしないといけない
・エラーをしてもへらへらと見過ごせない
・食習慣から見直さなければいけない
・ピッチャーをやりたがっている人を、忖度で使っていたけど、レギュラーから外したり、試合に出させないという決断が必要
・他所から優秀な選手をひっぱらなければいけない

というように、目標を変えると様々な課題が生まれます。すると、「そこまでやるつもりはなかった」とか「ついていけない」といったメンバーが必ず生まれます。この状態を組織用語で「葛藤と混乱」と言います。

④「目標」も「関係性」も高い組織 … 「強いチーム」
強いチームとは、共通の目標を持ちながら、かつ関係性が良い状態です。

目標を掲げると、人間関係の問題が
気にならなくなる不思議

この4つは大きく2つに分けると、目標の低いグループ=「烏合の衆」と「仲良しクラブ」、目標の高いグループ「葛藤と混乱」と「強いチーム」に分けられます。

目標の低いグループ(烏合の衆・仲良しクラブ)にいる場合、強いチームにすることはできません。まずは目標の高いグループにする必要があります。目標の高いグループの特徴は、コミュニケーションが「目標ベース」にであることです。一方、目標の低いグループのコミュニケーションは「関係性ベース」です。
目標ベースのコミュニケーションとは、

・どうすれば売上が伸びるか
・どうすればお客様にもっと喜んでもらえるか
・どうすればもっといい組織になるか

といった、目標達成に向かうコミュニケーションです。
対して、関係性ベースのコミュニケーションとは、例えば以下のようなものです。

・AさんとBさんが仲が悪い
・Cさんが辞めそうだ
・Dさんの言い方が気に食わない
・Eさんとは相性が悪い

お仕事で、人間関係で悩む人は本当に多いのですが、例えば、飲食店の店長に「いま、何で悩んでいますか?」と質問したときに、もしも関係性に関わるテーマしか出てこなければ、目標が低いグループ(烏合の衆・仲良しクラブ)の中にいると言えます。

逆に言えば、目標が高いグループ(葛藤と混乱・強いチーム)にいると、人間関係の問題は、ほとんどなくすことができます。人間関係の問題がなくなるなんてそんなバカな、と思われるでしょうが、どうやらそういうもののようです。人間関係に悩むより、目標達成に悩むことで、組織が健全し、成果が出るのです。

ちょっと極端な例ですが、想像してみてください。
あなたがいる部屋で、火事が起きたとします。そのときの組織の目標は、「いかに火を消すか」「いかに避難するか」というものになるはずです。
火の手が上がって目標に向かうときに、「水を汲んできて!」とか、「消防車呼んで!」と指示を出したときに、「その言い方はどうかな」とか「そういう言い方をする人と一緒に火を消したくないな」などと関係性ベースの問題を持ち出す人はいるでしょうか?
そうなんです。目標に向かう組織にとって、関係性の話は、取るに足らないテーマなのです。

目標に向かう組織は、関係性の問題の優先順位が落ちる。このことは、家族でも言えるわけです。家族の悩みは、何で悩んでいますか? おそらく、人間関係の問題がほとんどでしょう。

・奥さんと意見がぶつかる
・相手の言い分を聞いているとイライラする
・最近会話が減ってきた
・喧嘩ばかりしている

これらは関係性ベースの悩みです。
つまり、いま皆さんが家族で悩んでいることは、悩む必要がないことかもしれません。まずは「共通の目標を持つ」こと。そこから始める必要があります。
では、どんな目標を掲げるべきなのか。それは次の機会でお話します。目標を掲げることの重要性を、心に刻みましょう。

ご感想はこちら

プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...
その仕事、部下に任せなさい。

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
通算100万PVオーバーを記録した、アルファポリス・ビジネスのビジネスWeb連載の...
出版をご希望の方へ

公式連載