ビジネスでは優れたチームをつくれるリーダーが、夫婦になると難しい理由がここにあります。
ビジネスでは理念を掲げ、ビジョンを示し、価値観の合う人を増やし、そうではない人に降りてもらうという定石のアプローチが、夫婦では通用しないのです。
子育てのような大きなテーマの場合には、子育ての理念や方針を話し合って合意をしていくアプローチは大変有効だと思いますが、離婚の原因となるような、日常の細かな価値観の不一致は、理念やビジョンでは解消できません。
トイレを立ってするのか、座ってするのか、という問題は、理念やビジョンの問題ではないのです。
では、どうしたらいいのでしょうか。
私は、「価値観が異なるときの5つの態度」を選んでもらうことを推奨しています。
私自身が、コーチングのなかで学んだことなのですが、価値観が異なると感じる人に出会ったときに、どういう態度を取るべきか、それには5つの態度があるといいます。まず最初の3は以下です。
レベル1「否定する」
レベル2「疑う」
レベル3「受け入れる」
価値観が合わないときに、否定する、疑うというのは、ありがちな態度だと思います。
「なんでうちの妻はああなのかな」と疑ったり、「あいつの考え方はおかしい」と否定したりする。
ありがちですね。
「受け入れる」というのもよくわかる態度でしょう。
奥さんの考え方を甘んじて受け入れ、妥協する。奥さんがイヤがるならその行動をやめる。奥さんが喜ぶからそうする。そうやって、相手の価値観を受け入れる。とても尊い姿勢だと思います。
レベル3でもすでに相当に徳の高い態度でしょう。
では、レベル4,5は何だと思いますか?
ちょっと考えてみてください。
価値観が違うわけですから、「受け入れる」という態度は最上位にも思えますが、それよりも上の態度があります。
この態度が思いつかない、ということが、私には日本の夫婦のうまくいかない大きな要因だとも思えます。
では、レベル4はなんなのでしょうか。
レベル4「喜ぶ」
そう、価値観が合わないことを喜ぶのです。
私は、これを初めて聞いたときに、とても驚きました。
価値観が合わないなら、それを受け入れるか受け入れないか。その2択しか発想になく、受け入れられないなら疑ったり否定したりして、相手に変わってもらうか、関係を絶つか……そんな世界観にいたことに気づかされました。
喜ぶ、という非常にポジティブな選択肢があるとは想像すらしていなかったのです。
もしも、奥さんと価値観が合わないと感じた時に、その1つ1つを喜べたとしたらどうでしょうか?
「そうか、それが気になるんだね!」
「それは気付かなかった」
「そういうことを考えられるってステキだと思う!」
そんなふうに喜べたとしたら、どれだけステキな旦那になれるでしょうか。
ちなみに、レベル5は以下だそうです。
レベル5「祝う」
日本人の感覚だと、この祝うというのはどうにもしっくりこないことが多いのですが、価値観が合わなかったことを祝えるほどポジティブに捉えるというのは、私たちは見習うべき態度なのではないでしょうか。
「コミュニケーションに疲れる」というのは、よくあることです。
なぜ疲れるのか。
それは、価値観が違う時に、それを受け入れたり、疑ったり、否定したり、それをすり合わせようとすることにかなりの労力が必要だからではないでしょうか。
価値観が合わないなと思ったときに、それを喜ぶことができたら、むしろコミュニケーションによって元気がもらえるような毎日がやってくると思いませんか。
実は、ビジネスにおいても、この「価値観の違いを喜ぶ」という態度は、極めて有効です。
大きな方向性の価値観はすり合わせておくべきなのですが、上司と部下では細かな価値観は異なるものです。
また、部署が違うと、営業と経理とか、同じ方向を目指しているのに価値観がぶつかるというのは本当によくあることです。
この日常の、小さな価値観のズレを疑ったり否定したりすると、大きく神経をすり減らしてしまうことになります。
ビジネスでも家庭でも、私たちは、価値観の違いを喜び、祝い、そこからエネルギーを奪われるのではなく、パワーをもらえるようなコミュニケーションを心がけるべきなのです。
毎日の価値観の不一致を「喜ぶ」
新しい奥さんの価値観を発見できたことを「祝う」
この態度を選べるようになることが、夫婦をチームにする第一歩になるはずです。