「家族」というチームのつくり方

「よし、離婚しよう」と思う前に知ってほしい簡単な対処法

Getty Images

部下が言うことを聞かない、パワハラ・セクハラが横行している、メンバーにやる気がない、そんな問題ある組織をさまざまな「仕組み」によってよみがえらせてきた、組織運営のプロである筆者が「家族」という扱いの難しい組織をうまく運営する方法をお伝えいたします。。

自分の妻と価値観が合わない!と感じたことはありませんか?

多くの家族において、「夫婦で価値観が合わない」という場面は、枚挙にいとまがありません。
家族にお子さんがいる場合、子育てをどうするかという問題はその代表例でしょう。子どもの進路は夫婦の最重要テーマですから、お互い簡単には引き下がれません。たとえば以下のような問題で意見がぶつかってしまいます。

・受験をするのかしないのか
・公立の学校にするのか私立にするか
・勉強に力を入れるかスポーツか、はたまた芸術か
・習い事はさせるか、させ過ぎないか
・子どものやりたいことをさせるか、親がいいと思うものを与えるか

しかも厄介なのは、それらすべてに、お金の問題が絡むことです。
そのため、家計のやりくりをどうするか、お金の使いどころの優先順位をどこに置くべきか、そんなふうにして、夫婦の価値観のズレが浮き彫りになってしまうのです。

こうした夫婦の価値観の不一致は、子育てのような大きなテーマにとどまりません。以下のような、ほんのささいな日常の出来事でも、夫婦の価値観の不一致は現れてきます。

・トイレは立ってするのか座ってするのか
・お風呂の温度は何度が最適か
・みそ汁の味付け、食べる順序、健康への配慮度合い

問題はそれだけではありません。価値観はそのときの気分によっても変化するのです。
たとえば、旦那さんであるあなたが「今日は外食にしようか」と言ったとします。しかし、それは奥さんの受け取り方はさまざまです。

・「私は外食が好きだから嬉しい」なのか
・「食事を作るのも洗い物もしなくていいから嬉しい」なのか
・「せっかく自炊しようとしてたのに、私の料理はイヤなの?」なのか
・「あなたの健康が心配」なのか
・「お金使いすぎじゃない?」なのか、

時によっては、すごく喜んでくれるかもしれないし、ものすごく嫌がられるかもしれない。
これら1つ1つには、「正解」がありません。どう感じようともそれは価値観次第であり、そしてそのときの感情次第です。

離婚の原因に「性格の不一致」「価値観の不一致」は常に上位に上がりますが、価値観が合わないということを問題にしていたら、離婚の危機は毎日毎時間、毎秒ごとに訪れることになってしまいます。
これは、どうしたらいいのでしょうか。

ビジネスでは、価値観の一致は最重要テーマ

そもそも「価値観」とはなんでしょうか。辞書によると、「ものごとの価値についての考え方」とあります。私たちはいつも、何に価値があり、何に価値がないかを判断して優先順位をつけています。
これはいいことだね、これは意味があるね、これはやるべきではないね、とものごとの価値を判断し、行動の優先順位を付けているわけです。

つまり、価値観の一致とは、「行動の優先順位をつけるための判断基準の統一」という意味合いがあるわけです。
ビジネスにおいては、この「行動の優先順位」をつけることは極めて重要なことです。

どの行動を起こすことがより収益を高めるのか。
どの行動を改善することがより顧客価値を高めるのか。

この価値観が人によってズレればズレるほど、企業は競争力を失ってしまうわけです。
そこで、企業が何をするかというと、「企業理念」を掲げ、会社が存在する「目的」を一致させようと試みます。

ビジネスの世界では、会社と従業員の関係について「同じバスに乗っているか」という表現をよくします。
会社を1台のバスに見立て、バスには行き先があり、従業員はバスに乗っている人たちだとして、それぞれの向かおうとしている先は一緒なのだろうか、と確認するわけです。
行き先を気にしていない人がいたり、それぞれが違う方向を目指している人が乗っていたら、そのバスはどこに向かうべきかを見失ってしまいます。

そのために、企業理念を掲げ、中期ビジョンを掲げ、バスの行き先を示します。その行き先に共感した人はそのバスに乗り続け、そうではない人には降りてもらう。それがビジネスにおける「価値観一致」のアプローチの定石です。
具体的には、採用面接から見直して、常に会社の方向性を示し、従業員がどのバスに乗っているのかを理解させ、共感を促し、組織の一体感をつくろうとします。

ビジネスにおいては、この行き先の一致ができているかどうかが組織の力に直結するのですが、これを夫婦に置き換えると、どうなるのでしょうか。

ご感想はこちら

プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...
その仕事、部下に任せなさい。

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
通算100万PVオーバーを記録した、アルファポリス・ビジネスのビジネスWeb連載の...
出版をご希望の方へ

公式連載