社員成長の決め手は、人事が9割

人事の企画が、若手社員の顔つきを変える!

2024.07.24 公式 社員成長の決め手は、人事が9割 第29回

人事制度の導入、管理職の教育、社員との話し合いで離職者を減らせた

離職者を減らすことができたのも、人事の喜びの1つでした。これにはいろんな要因がありますが、1つは人事制度をちゃんと回せたこと。

どうやったら上の等級に上がれるのか、より成長できるのか、社員にキャリアステップを示せたことは、すごく大きかったと思います。昇格の基準を明確にできたことで、若手の離職が少なくなりました。

また「自己申告制度」を導入して「異動を願えば叶う可能性があるんだ」と社員に示せたこと(これについては前回の記事をご参照ください)も、離職者を減らす効果が高かったです。

そして、私が中途入社した企業はベンチャーでしたので、管理職の教育がきちんと行き届いていませんでした。制度導入に伴い管理職研修はやりましたが、やはりそれだけでは不十分。上司が部下の評価をちゃんとしているのかをチェックし、「人事評価や人材育成も管理職の重要な仕事です」と伝えることに努めました。

「自己申告制度」で異動を希望する部下が多い上司や、「360度評価」で評価の低い上司がいた場合は、そのままにしておくと部下たちが腐ってしまうかもしれません。その上司の上長に「まずいですよ」と進言したり、本人にも警告を発して個別教育をしたりしました。それでも改善しない場合は、部下を異動させて救ったこともありました。

離職者を減らすには、本人が「辞める」と決める前に話をすることが重要です。退職届が出てからでは遅いので、「実はちょっと悩んでいるんですよね…」という社員がいたら、私や人事のメンバーが会って話を聞いたり、その上司に「あの子、ちょっと様子がおかしいから話をしてもらえませんか」と相談して、離職を止めたりしていました。

もちろん離職はゼロにはなりません。成長した社員が転職してしまうこともあります。これは仕方ないことですから、無駄な離職を減らすことができたのは良かったと思います。

辞めた社員が今でも活躍していると聞くと嬉しい

離職の有無にかかわらず、悩んでいる社員の話を聞くことも人事の仕事です。多重債務で悩んでいる社員の話を聞くことも多くありました。原因はだいたいギャンブルなどが多いのですが、保険に入りすぎていたり、車を何台も持っていたりするので、お金の計画を立てたり、返済プランを一緒に考えたりもしました。

お金やプライベートの悩みで仕事に影響することがありそうだと思ったときは、相談に乗る。人生相談は、人事の喜びとはいえませんが、やりがいはありました。

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不正やハラスメントなどの対応も人事の仕事です。不正を行った社員を懲戒処分したり、ハラスメントの加害者にやめるよう説得したり、被害者を異動させて救ったりもしました。

心を病んでしまう社員もいますので、親と話したりもしました。うつの対応は非常に大変ですが、とても重要な仕事です。

労務問題の対応は、苦しいことも多くあります。ですが良い経験になりました。このように仕事の幅が広いのも、人事のやりがいだと思います。

自分が入れた制度をチューニングしながら使い続けてくれていることも嬉しいですし、辞めた社員から「部長になったんです」「独立して頑張っています」など活躍している話を聞けることも、人事の喜びを感じます。このやりがいの幅広さこそが、人事という仕事の最大の魅力かもしれません。

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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