離職者を減らすことができたのも、人事の喜びの1つでした。これにはいろんな要因がありますが、1つは人事制度をちゃんと回せたこと。
どうやったら上の等級に上がれるのか、より成長できるのか、社員にキャリアステップを示せたことは、すごく大きかったと思います。昇格の基準を明確にできたことで、若手の離職が少なくなりました。
また「自己申告制度」を導入して「異動を願えば叶う可能性があるんだ」と社員に示せたこと(これについては前回の記事をご参照ください)も、離職者を減らす効果が高かったです。
そして、私が中途入社した企業はベンチャーでしたので、管理職の教育がきちんと行き届いていませんでした。制度導入に伴い管理職研修はやりましたが、やはりそれだけでは不十分。上司が部下の評価をちゃんとしているのかをチェックし、「人事評価や人材育成も管理職の重要な仕事です」と伝えることに努めました。
「自己申告制度」で異動を希望する部下が多い上司や、「360度評価」で評価の低い上司がいた場合は、そのままにしておくと部下たちが腐ってしまうかもしれません。その上司の上長に「まずいですよ」と進言したり、本人にも警告を発して個別教育をしたりしました。それでも改善しない場合は、部下を異動させて救ったこともありました。
離職者を減らすには、本人が「辞める」と決める前に話をすることが重要です。退職届が出てからでは遅いので、「実はちょっと悩んでいるんですよね…」という社員がいたら、私や人事のメンバーが会って話を聞いたり、その上司に「あの子、ちょっと様子がおかしいから話をしてもらえませんか」と相談して、離職を止めたりしていました。
もちろん離職はゼロにはなりません。成長した社員が転職してしまうこともあります。これは仕方ないことですから、無駄な離職を減らすことができたのは良かったと思います。
離職の有無にかかわらず、悩んでいる社員の話を聞くことも人事の仕事です。多重債務で悩んでいる社員の話を聞くことも多くありました。原因はだいたいギャンブルなどが多いのですが、保険に入りすぎていたり、車を何台も持っていたりするので、お金の計画を立てたり、返済プランを一緒に考えたりもしました。
お金やプライベートの悩みで仕事に影響することがありそうだと思ったときは、相談に乗る。人生相談は、人事の喜びとはいえませんが、やりがいはありました。
不正やハラスメントなどの対応も人事の仕事です。不正を行った社員を懲戒処分したり、ハラスメントの加害者にやめるよう説得したり、被害者を異動させて救ったりもしました。
心を病んでしまう社員もいますので、親と話したりもしました。うつの対応は非常に大変ですが、とても重要な仕事です。
労務問題の対応は、苦しいことも多くあります。ですが良い経験になりました。このように仕事の幅が広いのも、人事のやりがいだと思います。
自分が入れた制度をチューニングしながら使い続けてくれていることも嬉しいですし、辞めた社員から「部長になったんです」「独立して頑張っています」など活躍している話を聞けることも、人事の喜びを感じます。このやりがいの幅広さこそが、人事という仕事の最大の魅力かもしれません。