社員成長の決め手は、人事が9割

〝ぼっち人事〟でも「人材」は立て直せる

2024.04.24 公式 社員成長の決め手は、人事が9割 第23回

最初にやるべきことは「経営者との対話」と「基本の勉強」

限られた人数の人事部門担当者、あるいはいきなり人事に任命された「ぼっち人事」がまず最初にやるべきことは、「経営者との対話」と「基本の勉強」。前回そのようにお伝えしました。

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では、具体的にいったいどんな話をすればいいのか、どんな勉強をすればいいのか、具体的に説明していきましょう。

人事の守破離

人事には大きく分けると、「ベタベタな人事」「ベタな人事」「おもしろ人事」という3つの段階があります。図の下のほうから見てみてください。

「ベタベタな人事」とは、労働法規や就業規則、労働時間や労務リスクの管理、給与の計算や支給、社会保険など、企業人事を行ううえで最低限必要となることです。

「ベタな人事」とは、採用・任命・配置など「人」にまつわる計画の策定や実行、等級制度・評価制度・給与制度など「人事制度」の構築や運用を指します。

「おもしろ人事」とは、採用イベントやインセンティブ、自己申告制度、FA制度など、自社らしさを発揮できる応用編です。

一見すると図の下にある「ベタベタな人事」の勉強から始めたほうが良いと思われるかもしれません。実際、労働法規や給与計算、社会保険の勉強から始める人も多くいます。しかし私は、その方法はおすすめしません。「ベタベタな人事」は、社労士さんに聞けばわかります。「ベタな人事」も、最優先ではありません。「おもしろ人事」は、基礎を身につけてから取り組むべきです。

図の最上段に「中長期的人事戦略・人事ポリシー」とありますよね。これこそが経営者と真っ先に話すべきことであり、「ぼっち人事」が最初に学ぶべきことなのです。

人事ポリシー=「企業の、人に対する考え方」を決める

中長期的人事戦略とは、人事における中長期的なビジョンのことです。企業経営において中長期的戦略が重要であることは、経営者やミドルマネージャークラス以上のビジネスパーソンにとっては釈迦に説法でしょう。けれども「人」のことまで中長期的に考えているでしょうか?

人が採れなかったり、育たなかったり、離職者が増えてしまったりする原因の大半は、実は「人」に対する中長期的なビジョンの不足にあると考えられます。

たとえば、ある企業では「人を育てる」という経営理念を掲げていましたが、事業規模の拡大によって人材不足に陥り「即戦力が大事だ」と方向転換。その結果、「社長、言っていることと、やっていることが違うじゃないですか」と社員が猛反発。会社への不信感が広がり、離職者が続出する事態となってしまいました。

会社の「人に対する考え方」がブレると、社員からの信頼を失ってしまいます。それは会社全体の業績の低下にもつながるでしょう。このような悲劇を防ぐためにも重要なのが、「中長期的人事戦略」と「人事ポリシー」なのです。

人事ポリシーとは「企業の、人に対する考え方」を指します。あらゆる人事施策の軸であり、それぞれの企業の個性ともいえます。

たとえば、何を大事にして評価し、給与・賞与を払うのか(成果なのか、行動なのか、能力なのか、あるいは年功・勤続・年齢なのか)。どんな人材を求めるのか(リーダーシップとマネジメント、どちらを重視するのか)。どのような人材に育てるのか(コア・スペシャリスト・マネージャー・オペレーター)。

これらの考え方を決めておかないと、採用も評価も教育もできません。景気やマーケットの動向による変化があっても、会社としてのブレない姿勢を貫いていくためには「よりどころ」となる考え方が必要なのです。まずは経営者と話し合い、自社の人事ポリシー=「人に対する考え方」を決めることから始めてください。

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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