社員成長の決め手は、人事が9割

「仕事ができるエース社員」を管理職としても有能に育てるたった一つの方法

2023.12.13 公式 社員成長の決め手は、人事が9割 第14回

現場のエースを管理職にする場合は、ミッションを明確にする

中小企業やベンチャーでは、現場のエースを管理職にせざるを得ないのも事実です。会社の規模が小さければ小さいほど、そういう判断になるでしょう。しかし「数字も上げろ、人も育てろ」は本来、無理な話です。プレイヤーとマネジメント、どちらがメインなのかをハッキリさせてあげないと本人も辛くなります。エースで4番を潰してしまったら、会社としても大損失ですよね。

エースで4番を管理職にせざるを得ない場合でもあっても、プレイングマネージャーとマネージングプレイヤーは区別するようにしましょう。プレイングマネージャーは、プレイヤーもするけれど、マネジメントがメイン。マネジングプレイヤーは、マネジメントもするけれど、プレイヤーがメイン。管理職を任命するときは、プレイヤーとマネジメントの比率、仕事内容、役割などを明示するようにしてください、

管理職が果たすべき役割を明確にする「職位要件」を示すことは、人事の重要な仕事の1つです。職位要件とは、「管理職に求めること」を具体的に明文化したもの。課長であれば、「目標設定・予算策定・実績管理・人材育成」といった管理職としてやるべきことを明示し、そのうえで「課全体の業績向上と人を育てること。この2つがあなたのメインミッションです」と伝えるのです。

課長に求めること、部長に求めることなど、管理職の役割を曖昧にしたまま、「来期から管理職ね。よろしく」と伝えるだけ。そういう会社が非常に多くありますが、それでは管理職になる人も何をしたらいいのかわかりません。プレイングマネージャーになるなら、なおさらです。

プレイングマネージャーをやってもらう場合は、プレイングとマネジメントの比率を明確にしましょう。たとえば、プレイヤーがメインなら、プレイが6、マネジメントが4という比率を示して、「週2日は営業に行かず、部下の同行をしてください。その代わり、今まで100だった目標数字を60に減らします。減った分の40は部下の面倒を見る時間に当ててください」などと伝えるのです。

管理職が疲弊すると、その会社に未来はない

管理職とは、そもそも何をするのか。プレイヤーとマネジメント、どちらをメインにすればいいのか。その比率はどれくらいか。このようにして会社側からやるべきことを具体的に伝えてあげないと、プレイングマネージャーになる人が可哀想です。「数字も上げろ、人を育てろ」では、エースで4番も間違いなく疲弊します。

ある企業のアンケートによると、「管理職になりたくない」と答えた人は77%にのぼります。これは長年のプレイングマネージャー偏重主義がもたらした結果でしょう。管理職がみんな疲れているから、社員も将来に希望が持てなくなって、会社が沈滞してしまうのです。こういう状況は変えていかなくてはなりません。

企業の管理職研修の講師をする際、私はよくこんな話をしています。「みなさん、すいませんが、楽しそうに仕事をしてくださいね。あなたたちが辛そうにしていると、あなたたちの部下は将来に希望が持てなくなります。管理職になった人が楽しそうに仕事をしていなかったら、この会社に先はないですよ。はい、笑ってください」。

あなたの会社も管理職になったからといってマネジメントだけに専念してもらうのは難しい状況かもしれません。それでもプレイングマネージャーのあり方については、もう一度、よく考えてみてください。エースで4番に限らず、管理職が笑顔で楽しそうに仕事を続けていくためには、それができる仕組みが必要です。

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管理職になったら、個人の数字は持たせない。あるいは、減らす。プレイングマネージャーは、チーム全体の数字で評価する。評価基準に「人材育成」の項目を設けて、部下の人事評価が上がったら管理職の評価も上げるーー。

プレイングマネージャーの負担を下げ、管理職としてのモチベーションを上げるための方法はいろいろあります。その仕組みを考えるのが、人事の仕事です。

次回につづく

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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