定員計画、要員計画、人員計画、異動計画、採用計画、これらの計画を作るのは容易ではありません。定員計画で人件費予算を決めるときには、各部門別にヒアリングを行い、現在の人員状況を把握し、来期に向けて増員が必要なのか、減員できるのかを確認していく必要があります。これは当然「聞くだけ」では済みません。
現場は「人が足りない」と言うでしょうし、経営は「人を減らせ」と言ったりします。両者の要望に挟まれながら、調整と交渉を繰り返していきます。そうして「定員計画」や「要員計画」を立て、「人員計画」で実際に人員を配置していくわけですが、ここでも多くの要望に対する調整や交渉、ときには粘り強い説得も必要になります。
現場のリーダーは、優秀な人材は手放したくありませんし、そうでない人材は他部署への異動を願ったりします。一方、自ら異動を希望する社員もいます。たとえ本人が望まなくても、さまざまな部署を経験させることが必要だったりもします。全国展開の会社だったら、転勤させる場合には家庭の事情を考慮する必要もあるでしょう。
現場の要望はもちろんですが、「この人はこういうキャリアで成長させるべきだ」「この人がもっと活躍できる場はないか」といった人事側の想いも大切になります。人事担当者は、さまざまな要望や個別の事情、自身の想いなどを反映しながら調整と交渉、説得を繰り返して、配置や異動、採用の計画を立てていくのです。
3月決算の会社であれば、11月頃から人事担当者が各部門にヒアリングを行い、来期に向けての状況を確認していきます。併せてメンバーの来期以降の育成方針や異動方針、あるいは課題などを聞きます。各部門の来期予算の提出は、年内12月頃までが多いでしょう。
2月初旬までに来期予算、組織、部長などの主要人事、定員計画の策定を行います。2月中旬から3月上旬までに要員計画と人員計画の策定と人員異動調整を行い、3月中旬には、4月からの組織や人員を確定し、社員に対して内示をします。この間に異動や転勤の可否などの個別事情も勘案するため、さまざまな調整業務があります。
ある程度大きな会社では、このようにして人材配置や採用を決めていきますが、小さな会社では基本的に経営者が人事を兼務しています。そのため「3人ぐらい採れたらいいんじゃない?」「2人しか採れなかったけど、まあいいか」といった大雑把な感覚で配置や採用を行っていることがほとんどでしょう。
しかし、社員数が100名くらいまで増え、人事担当者を置くというステージに行けば、やはりそれだけでは厳しくなってきます。人事担当者に任命された人は、まずは社内の人員構成を確認することから始めてみてください。
たとえば、年齢構成です。何歳の人がどれだけいるのか。誰も辞めなければ5年後はみんな5歳年を取ります。平均年齢が50代になっているかもしれません。これは簡単にわかりますよね。となれば「やっぱり若手を入れたほうがいいよね」「20代は無理でも30代前半の人を採ろう」など、採用すべき人材の年齢層が見えてきます。
年功序列の会社では、社員の給料も5年分上がります。毎年給料を上げていっても会社は持つのか、人件費が毎年2%上がっていったらどうなるかのかなど、社長と一緒にシミュレーションしてみてください。中長期的な人件費を予測すれば、採用だけでなく、給与・厚生、評価・育成など、今後の人事施策の方向性が見えてきます。
5年後には定年になって会社を辞める人もいれば、定年後再雇用で残る人もいるでしょう。3年後、5年後に会社の事業がどうなっているかは読めないかもしれませんが、人がどうなっているのかは意外と簡単に予測することができます。
経営者は多忙なので、今後の人事について漠然と考えていたとしても、年齢構成をシミュレーションしている時間はないでしょう。人事担当者になった人は、まずはこうした計算から始めてみてください。そのうえで経営者と向き合い、1人ひとりの社員について「あの人どうしましょう」「今度こういう仕事をさせたらどうですか」といった話を常にするようにして、自社の人員計画について考えていきましょう。
次回につづく