社員成長の決め手は、人事が9割

経営層は知っておきたい、「人事」に必要な資質と能力

2023.10.11 公式 社員成長の決め手は、人事が9割 第10回

人事担当者に必要な能力とは、どんな人材が適しているのでしょうか。前回に続いて、今回は人事に求められる知識・スキル・資質などについて詳しくお伝えします。まずは一般的に求められている「人事担当者に必要な能力」を紹介します。すでに人事業務に就いている人は、ご自身の知識やスキルをチェックしてみてください。

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①理念・社会理解
・経営理念を自らの言葉で熱く語ることができる
・自社の人事ポリシーを網羅的に構築・理解し、各施策がポリシーに則っているかを常に検証する
・過去から現在までの社内のことをよく理解している
・経営陣、経営幹部層との信頼感のある人的ネットワークを持っている
・組織構成と職務分掌を理解している
・社員個々人のことを知っている
・自身のキャリアビジョン・キャリアプランを持ち、語ることができる

②人事制度構築(等級・評価・給与)
・人事制度の構築要素を理解し、相互を関連づけながら設計できる
・人事制度構築にあたって、労働法規等を考慮し、制度に反映できる
・人事制度を周知することができる

③人事制度運用
・等級制度・評価制度・給与制度を運用することができる
・評価制度を運用し、公正な評価調整を主導できる
・評価者への教育ができる
・昇格・降格の調整と運用ができる
・給与改定、賞与決定を主導できる
・必要であれば人事制度を適宜改定し、導入・運用ができる

④採用
・採用市場の動向を把握している
・適切な採用手法(媒体・エージェント等)をとることができる
・適切な選考を行うことができる
・選考にあたって、自社に有用な人材を見極めることができる
・応募者を意識付けすることができる
・人材を見極める要素を理解している

⑤人材配置
・業績向上と人材育成を考慮した人材配置(人事異動)戦略を策定することができる
・組織構成に基づき、適切な人事異動・配置案を策定することができる
・配置にあたって、各種施策(自己申告制度など)を展開できる
・人事異動調整を経営・各部門と行い、人事異動を完了することができる

⑥勤労・労務
・社員の個別労務案件への対応ができる
・メンタルヘルス、ハラスメント、情報漏洩など、さまざまな問題のリスクを理解し、適切な対応ができる
・労働基準監督署、職業安定所など、公的機関への対応ができる
・賞罰を適切に運用できる
・必要な人事面談を、トラブル収束のために適切に実施することができる

⑦人事管理・規定
・労働法規の基本を理解している
・自社の就業規則等の規定を理解し、リスクを回避するために適宜改定することができる
・労働時間管理・安全衛生管理を適切に実施することができる
・リスクを予見した際に、経営・各管理職等と連絡を取り、適切に対処することができる

⑧教育
・一過性にならない、網羅的な教育体系をつくることができる
・人事制度と関連した汎用的教育を実施できる
・自身が講師として研修を実施できる

⑨給与・厚生
・給与計算に必要な要素を理解している
・労働法規をにらみながら、適切な時間管理と給与計算・支給ができる
・社会保険手続きを理解している
・適切な福利厚生施策を企画・導入できる

⑩全般
・人事機能を構築し運用した経験がある
・人事関連企業・専門家とのリレーションを持ち、適切な外部支援を受けることができる

何ができて、何ができないのか、客観的に捉えられる

人事に必要な能力は、以上の10項目が挙げられます。たくさんありますよね。人事の領域は非常に幅広いため、さまざまな知識やスキルが必要とされるのです。とはいえ、これらを全部できる人はなかなかいません。私自身もすべてできるとは言えません。ですが、何ができて、何ができないのかを、客観的に捉えられることは重要です。

人事に必要な資質の1つは、自己客観視です。たとえば、私はよく「人事担当者は信念を持ちましょう」と言っています。人事担当者として「何を実現したいのか」「どのような会社にしたいのか」「何を大切にしていくか」を徐々に明らかにしていって、自分なりの軸を持ってもらいたいのです。

ただし、経験が浅いうちは、この信念が強すぎると偏ってしまいます。ただのガンコ者では困りますから、「この考えは公正なんだっけ」「この想いは本当に正しいんだっけ」と自分の考えを客観的に検証しながら、バランスを重視して、より多くのことを吸収しながら、少しずつ信念を形成していくことが大事になります。

制度や評価など、人事は常に「公正」であることが求められる職務です。また、人事は幅広い分野を担うため、自分は何ができて、何ができないのかを把握することも重要になります。だからこそ自己客観視は、人事に必要な資質の1つなのです。

さらに、人事担当者にとって重要な資質として「人への関心」と「自分を信頼していること」が挙げられます。この2つについても、それぞれ詳しく解説しましょう。

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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