社員成長の決め手は、人事が9割

「今まさに『人事』が重要!」――理解しつつも何もしてない会社が7割

また「人事業務を行う際に戦略人事の考え方や視点を持って取り組んでいるか」という質問では、「取り組んでいない」は6.7%とごくわずかでしたが、「取り組みたいができていない」が51.6%。「取り組んでいる」は38.5%でした。

つまり半数以上の企業は、戦略人事の重要性はわかっているし、取り組みたいとも考えてはいるものの、実際には「できていない」のが実情のようです。

なぜ多くの会社は、戦略人事ができないのでしょうか。「戦略人事に取り組んでいない理由」として最も多かったのは「何をすればいいのかわからない」(37.0%)。これは困りますね。
そして「経営が戦略人事を求めていない」(35.2%)でした。経営が求めてないことはないだろうと思いますが、人事担当者はそう思っているのかもしれません。

また「戦略人事への取り組みができていない理由」として、「戦略人事を実践するための知識や経験が不足している」(33.4%)、「業務に追われていて戦略人事に取り組む余裕がない」(26.9%)、「人事部門の体制が整っていない」(19.1%)という声が約8割を占めていました。

「戦略人事」ができなければ「人的資本経営」はできない

では、もうひとつの「人的資本経営」の方はどうでしょうか。こちらも「日本の人事部 人事白書2022」の結果から読み解いていきましょう。

「人事部門が経営戦略の意思決定に関与している」に「当てはまる」と回答したのは、わずか10.9%。「どちらかといえば当てはまる」は32.8%でしたが、「どちらかといえば当てはまらない」(29.0%)「当てはまらない」(25.0%)が全体の半数以上を占めていました。

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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