キャリアアップ、資格試験、公務員試験、TOEIC、リスキリングなどにおいて、予備校や専門学校に頼らず一人で勉強するのはうまくいかないものです。いわゆる「独学」が難しいといわれる理由は――人間の意志がそもそも弱いからです。ただし、人間の意志は弱いという事実を受け入れることで、独学の成功率を高めることができます。この本には、忙しい社会人でも実践できる、独学を成功させるためのノウハウが満載です!
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経営していたドラゴンラーメンを、2022年10月末で閉店しました。
2年前に開店してから、徐々に来客が増え、最後は毎日1時間待ちの大行列でした。そのような状況でも閉店を選んだ最大の原因は、私のキャパシティ不足です。
店長として、レシピの作成、ホームページの制作、SNSの運用、味のチェックなど、店に関わるあらゆることを行ってきました。最近は少なくなっていたものの、開店当初は厨房で毎日ラーメンを作っていました。
スタッフの教育も自分自身で行っていたため、本業が忙しくなると、それらを行う時間がなくなってしまいました。
もちろん、原価高騰や人手不足で採算を合わせることが難しくなってきたことも理由の一つです。
ラーメン屋を始めるときは、家族も含め、周囲から反対を受けました。実際、店に立ってラーメンを作りながら本業をこなすのは大変で、振り返ると我ながらよくできたものだと思います。妻にだけは事前に相談したものの、開店も閉店も、自分一人で決めました。
一般的に、飲食店を始める際は融資を受けて店舗を契約する人が多いですが、本業で安定した収入があるため、借入もなく、閉店の翌日には片付けも終わり、清算を終えました。
開店した理由はざっくり言うと、「やってみたかったから」です。リスクの高い飲食業を自ら体験することで、経営者の苦しさを理解したいという思いもありました。
2年間経営した結果、約250万円が手元に残りました。本業に比べると利益率はとても低いですが、血肉になる学びは随所にあり、よい体験でした。
開店と閉店を自分だけで決められたのは、本業で安定収入があったからです。
難関資格試験に合格すると、人生の選択肢が増え、可能性が広がります。たとえば、私は青森県で事務所を開いていますが、東京で就職することも可能です。一人で経理部門の立ち上げから上場までに対応することができるため、就職先には困りません。
監査法人に入ることもできます。身につけたラーメンのスキルを生かし、海外で店を開くこともできます。
いつかやってみたいです。
ひと昔前のように、難関資格を取れば一生安泰という時代ではありません。
ですが、いまでも、合格すると自由とある程度の保障を得られます。
実際に、私がかつて取得した資格と、それによって人生がどう変わったかは、次のとおりです。
[2007年6月]日商簿記1級に合格
勉強期間は約半年、合格した結果、経理部門などの転職先が増えた
合格当時、新聞記者を辞めて公認会計士試験の勉強をしていたものの、挫折して就職を検討していました。
合格した結果、転職サイトでプロフィールに書ける資格を取得でき、面接に進みやすくなったように感じます。
[2008年11月] 行政書士試験に合格
勉強期間は約半年、とくに転職などでメリットは感じなかった
合格当時、新聞記者を辞めて転職し、東証二部の化学メーカーで経営企画を担当する部署に勤務していました。
合格によっても給与の上昇はなく、転職においてもとくに有利になることはありませんでした。
安定した収入を得ることは難しいと考えたため、行政書士のみで開業はしませんでした。なお、当時の年収は500万円ほどでした。
[2009年5月ごろ] TOEIC820を取得
勉強期間は約半年、外資系企業や英語を使う企業への転職先が大きく増えた
TOEICは大学生以来、2回目の受験でした。
引き続き化学メーカーに勤務していました。スコアの取得によって転職サイトで応募できる会社が大幅に増えました。取得から半年後、外航海運会社に転職し、年収が200万円上がりました。
[2013年7月] 司法書士試験に合格
勉強期間は約2年、転職時のメリットは大きくないが、独立開業が可能になった
外航海運会社に勤務しており、合格は会社に知らせませんでした。
当時の制度には資格手当がなかったため、年収が上がることはなかったと思います。
また、司法書士資格を有していても、転職先はそれほど増えないように感じます。
[2014年8月] 公認会計士試験に合格
勉強期間は約1年、多様な企業や監査法人への転職、独立開業が可能になった
引き続き外航海運会社に勤務していました。
受験後に退職し、少しの休職期間を経て小規模監査法人に転職しました。
早期独立を考えていたため、大手監査法人の求人へは応募しませんでしたが、当時は人手不足だったため、転職は可能だったと思います。
一般企業についても、公認会計士資格を保有していれば、多くの一流企業への転職が可能です。
[2016年8月] 宅地建物取引士試験に合格
勉強期間は約1か月、不動産会社への転職や独立開業が可能になった
すでに独立開業しており、「いつか使うかもしれない」程度の考えで受験しました。
合格後もとくに資格を使うことはありませんでしたが、業務上、宅建業の登録が必要になったため、取得した資格を使って不動産業を始めました。
もし就職を考えた場合は、不動産会社に就職が可能で、多少の手当も得られると思います。
こうして振り返ると、個人的な経験では、転職にもっとも役立ったのはTOEICで、独立開業に役立つのは司法書士と公認会計士でした。
転職時に資格があると、一定の能力を保有していることを証明できるため、選択肢が広がるでしょう。
私の例では、英語を日常的に使用する外航海運会社については、TOEICのスコアを保有していたために転職できたと思います。
前提知識の差があるため一概には言えないものの、着目してほしいのは、どの資格も1~2年ほどで取得できている点です。
TOEICと行政書士については、ほぼゼロの状態から始めたので、これから勉強を始める人でも、1年で資格試験に合格することは十分可能です。
あくまで個人的な意見になりますが、宅建士や行政書士、TOEIC800、税理士の簿記論・財務諸表論などは1年間で合格可能であり、司法書士試験や公認会計士試験は、丸1年での合格は難しいと思います。