この話を踏まえて、スケジュールについて考えてみましょう。
格闘技も資格試験も、さらには仕事も、成長できる人に共通するのが課題意識です。時間に限りがあるなかで目的を達成するには、効率を高めることが近道です。わかりやすく言えば、一つ一つの行為に意味を持たせることが重要です。
資格試験に長年受からない人の話を聞くと、だいたい同じパターンで失敗しています。
それは、過去問を確認せず、教科書の最初から勉強を始めることです。このやり方だと、効率は高くなりません。
どこに問題点があるかわかるでしょうか。課題意識をテーマに少し考えてみましょう。
答えは、勉強の終着点を理解せずに、勉強を始めているからです。
資格試験に取り組む目的は、合格することです。知識を得ることも必要ですが、合格するかしないかには、天と地の差があります。
とくに独立開業が一般的な資格については、資格の有無が人生に大きく関わります。どれだけ実務経験があり、資格者より手続きに詳しくても、資格を保有していなければ、開業することはできません。
資格を保有せず、士業事務所で働く人のことを、一般的に補助者と呼びます。補助者は自分の名前で各種手続きを行えないので、雇われて働くことになり、相性の合う資格者が見つからなければ、充実した労働環境を得られません。
また、資格者が廃業したり、死亡したりした場合は、自分だけでは仕事を得ることができないため、他事務所に転職先を探すことになります。一般的に、ベテラン補助者の転職は簡単ではないと思います。若い資格者であれば、自分より年上の補助者を好んで雇用する人は少数派です。長く続いている事務所への転職を目指す場合は、すでに勤務している補助者から見れば、他事務所から移籍してくるベテランを歓迎することはあまりないように思います。
大規模法人であれば、そのような問題は少ないかもしれませんが、年齢の壁が存在し、若くなければ転職は難しいかもしれません。
資格を取れなければ、人生に行き詰まる可能性があります。
一方で、地方は資格者が不足しており、基本的に就職に困ることはありません。
昔のように「資格があれば楽に食べていける」ということはありませんが、難関資格であれば、生きていくための収入を得られる可能性は高いでしょう。
このように、資格試験を受験する目的は「合格すること」以外にありません。
実務を行う際の知識は後から身につけることができます。
極端に言えば、ラッキーでも合格してしまえばよく、落ちてしまえばどんなに実力があっても意味がないのです。
結果が出ない人は、この部分を勘違いしていることが多いです。
じっくりと試験範囲を一から勉強し、十分に理解してから次の論点に進む――ということをやっていると、時間がいくらあっても足りません。
そして、過去問をチェックすることは、勉強の終着点を定めることです。例年出題される本番の問題が解ける実力をつけることが、勉強の目的です。
試験問題をチェックしてから勉強を開始すると、合格に必要な実力がわかります。出題される問題のレベルを把握できるからです。
もちろん、最初に1回見ただけでは、どのくらい勉強すればよいか、完全に理解することは不可能です。それでも、大まかなレベルはわかります。
そのため、勉強を進めることと並行して、過去問を解く習慣をつけることをおすすめします。勉強が進み、科目内容の理解が進むにつれて、次第に必要な実力を見極める精度が高まるようになります。
勉強の内容は、テキストを読むことと問題を解くことに大きく分かれます。
スケジュールを組む際は、「合格する」という終着点を常に意識し、ある行為がどのような意味を持つのかを考えて、構成を考えるべきです。
たとえば、テキストに漠然と目を通すのではなく、「過去問でこの用語を説明させる問題が出ていたから意味を理解する」などの意味づけをしながら、一つ一つのノルマをこなすことが必要です。
問題を解く際は、よく間違えてしまう問題の解法を体で覚えられるまで繰り返しましょう。
専門学校のカリキュラムやベストセラーのテキストは本当によくできていて、試験範囲を網羅しており、すべて理解できれば合格する可能性は高いです。
しかし、専門学校に通ったり、テキストをそろえたりした人のうち、多くの割合が、合格という最終目標に到達できません。
必要なレベルに到達できるよう、復習を繰り返し、必要な実力を身につけた人だけが合格できるのです。
難しい話に聞こえるかもしれませんが、とても単純な話です。
皆さんのこれまでの経験を振り返ってみましょう。
仕事もスポーツも、成長するための方法はすべて同じです。必要な要素を理解し、必要なトレーニングを積むことで、徐々にレベルアップしていきます。体力が足りないならマラソン、パワーが足りないならウエイトトレーニングなど、スポーツに置きかえるとわかりやすいと思います。
勉強もレベルアップするという観点では、それまでの人生経験が生きるはずです。
どんなジャンルでもよいので、周りで「この人はすごい」という人を探してみましょう。必ず、行動にテーマを持ち、成長するための適切な努力を重ねているはずです。
その時間が有意義になるか、意味のないものになるかは、向き合い方一つで変わります。課題意識をもって、一つ一つの時間に向き合ってみましょう。