キャリアアップ、資格試験、公務員試験、TOEIC、リスキリングなどにおいて、予備校や専門学校に頼らず一人で勉強するのはうまくいかないものです。いわゆる「独学」が難しいといわれる理由は――人間の意志がそもそも弱いからです。ただし、人間の意志は弱いという事実を受け入れることで、独学の成功率を高めることができます。この本には、忙しい社会人でも実践できる、独学を成功させるためのノウハウが満載です!
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ルーティンづくりに次いで大事なのが、集中することです。集中できなければ、いくら勉強習慣をつくったとことであまり意味はないでしょう。資格試験の勉強は、
① テキストを読むインプット
② 問題を解くことで理解が進んでいるかを確かめるアウトプット
③ 本番と同じ形式で実力を発揮できるかを確かめる模試
の3種類を繰り返すサイクルが続いていきます。
いずれも集中が必要ですが、とくにインプットのときは、集中しているかどうかで成果が大きく分かれます。どこが重要なのか、なぜそのような規定になっているのか、行間の意味を考えながら読むことで理解が早まり、学習効率が高まります。
もちろん、模試や問題を解く場合と違って、テキストを読む際は、集中していなくてもページを進めることができます。ですが、文字を目で追いながら別のことを考えていると、内容が頭に入りません。だらだらと時間が流れ、結果として予定の分量を読み進めることができたとしても、読んだ内容が記憶に深く刻まれることはありません。
集中するためには、勉強以外のことに意識を向けないことが重要です。余計なことが頭をよぎると気になってしまい、集中が阻害されてしまいます。言葉でいうと簡単なものですが、実際にやるとなかなか大変です。
いままでの経験を振り返ってみましょう。勉強に限らず、仕事の企画書や、大学の課題など、提出期限があるものに取り組んだ際に、苦労したことがあると思います。そのときに、「さあ、集中しよう!」と決めて作業を始め、うまくいったことはあるでしょうか。おそらく、ほとんどないはずです。
よくあるのは、始める前についついスマホやテレビを見てなかなか体が動かず、いざ始めてもネットを見て時間をつぶしたり、電話がかかってきて手が止まったりしてしまうパターンです。目標どおりに進むことはなく、気づけば時間だけが経過している――誰でもこうなった経験があるでしょう。やりたくないことをやるのは大変なエネルギーが必要です。勉強はもちろん、ダイエットが成功しないのも、お金がたまらないのも、「嫌なことに積極的に取り組まなければならない」という大きなハードルが存在しているからです。そして、そのハードルは意志の力で越えることが難しいのです。
そこで、対策の一つとしておすすめしたいのが、「物理的に制約をつくること」です。
わかりやすいのは、引っ越しの準備や片付けです。荷物を整理するうちに、好きだったマンガを読み始めてしまったり、昔のアルバムが出てきたりして、一向に整理が進まない、ということになりがちです。人間は誰しも、誘惑に弱いものです。片付けが面倒だと感じているときに、面白そうなものが目につけば、ついつい手が伸びてしまうでしょう。一方、同じ作業をしていても、片付ける対象が、タイ語やアラビア語など、読めない言語で書かれた本であれば、手が止まることは少なくなるはずです。気を引くものが近くになければ、集中が阻害されるきっかけは減ります。
スマホやテレビも同じです。手の届く距離にスマホ本体やテレビのリモコンがあれば、触りたくなるのは当然です。勉強していると徐々にストレスがたまり、ネットやテレビを見たくなります。「ちょっとだけ」という気持ちで見始めると、気がつけば予定より長く休憩してしまうことになりやすいです。集中するために、勉強する時間は、触りたくなるものはなるべく目につかない場所に置いたほうがよいのです。