仮想ライバルを導入するにはあたって、注意すべき点もあります。
第一に、「馴れ合わないこと」です。
Twitterはリプライや引用でコミュニケーションを取ることができ、ツイートしている人と気軽にコンタクトできるのが大きな魅力です。同じ境遇で人柄もよさそうな人を見つけた場合は、仲良くなりたくなるのが人情でしょう。ですが、個人的には、そのような人に対してもフォローするだけに留めるべきで、リプライなどでこちらの存在をアピールすることはおすすめしません。
理由は、資格試験を受験している時期においては、Twitterやブログなどで情報発信するのは時間のムダだからです。模試の感想や講義の感想を書き込む暇があれば、少しでもテキストを読んで知識を付けるべきです。情報発信している人を仮想ライバルとするのに、こちらは情報を書かないという関係はなんとも冷たいように思うかもしれませんが、すでに発信している人はストレス解消などの目的があって時間を使っているので、こちらの存在を知らせなくても困ることはありません。情報を得て、成績や勉強内容に刺激を受け、自らの成長につなげましょう。
続いて注意すべきは、「こだわらないこと」です。
仮想ライバルはあくまでも仮想にすぎません。
自らのレベルに応じて、適切な人の情報を入手しましょう。
例えば、勉強を開始してすぐの時期は、情報発信が盛んで、勉強時間の長い人が目に入りやすいはずです。前年の試験を惜しくも落ちてしまい、次の試験で合格が確実視される人は自分より実力が高すぎるため、ライバルとして意識するのは難しいです。もしライバルに設定した場合は、実力の違いを日々感じることになり、モチベーションの低下につながる危険性もあります。従って、勉強開始当初は、初学者と実力がそれほど違わない受験生を仮想ライバルにすべきです。
ところが、最初に設定したライバルは、実力が順調に高くなるとは限りません。
何年も連続して不合格を続けているベテラン受験生にありがちですが、勉強のペースが上がらないために成績が伸びず、合格にはほど遠いまま本試験の日を迎えてしまうような人もいます。
仮想ライバルは自分の写し鏡です。設定したライバルの努力に自分の努力が及ばなければ、もっと努力しようという気持ちが湧きますし、成績で負けていた場合は、ルーティンを見直して、より効率化するよう努めるでしょう。そのため、ライバルの努力や実力を自分が完全に上回ってしまった場合は、その相手はライバルとして適当な存在ではなくなります。ドラゴンクエストなどのRPGで考えると、最初に設定したライバルにこだわるのは、レベルが上がってもスライムを倒し続けるようなものです。ゲームなら時間は無限ですが、現実は時間が限られるので、より効率よく努力するためにも、常に自分より少し上の存在をライバルとして設定することが適当です。仮想ライバルが物足りなくなったと感じたら、よりレベルの高いライバルを探しましょう。
私の経験では、司法書士試験を受けていた際に、模試の成績をいつも公表してくれる人がおり、その人の成績を上回ろうといつも努力していました。結果として、同じタイミングで私も仮想ライバルも合格することができ、独学の私にとってはモチベーションを維持する存在として、とても役に立ちました。
公認会計士試験を受験した際は、当初ベテランの受験生を仮想ライバルとして設定したのですが、その人はしだいに仕事が忙しいことや、やる気が出ないことを理由に勉強のペースが落ち、グルメ情報など試験に関係ないことを発信し始めました。そのため、ライバルとして適当ではないと判断し、別の人を目標に変更しました。結果として、公認会計士試験も短期で合格することができたので、ライバルの「乗り換え」は適切だったと思います。
北斗の拳のケンシロウは、最初からラオウと戦っていたわけではなく、モヒカンの有象無象の存在や、無名の拳士を倒すことで少しずつ成長していきました。最初から強すぎるライバルに挑んでいたら、負けて漫画も終わっていたでしょう。
自分のモチベーション管理に、仮想ライバルの設定は役立ちます。ライバルの存在がマイナスにならないよう、設置するメリットを意識しながら、追いつきたい人を探しましょう。
・インターネットなどで、仮想ライバルを作る
・ただし、必要以上に馴れ合わない
・自らのレベルに応じて、適切なライバルに乗り換えていく