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ある夜、男子高校生の宮東紫苑(みやとうしおん)は自宅の神社で傷ついた白兎を拾う。その白兎は月に住む兎『天兎(てんと)』であり、人間の女性の姿を取ることができた。
天兎は月の光に由来する不思議な力『ユエ』を持ち、これにより月で生きることができるという。紫苑は彼女をアオと名づけて家に置くことにした。
聞けば大昔から、空腹の老人に扮した神様を、ある白兎が身を捧げて助けたという御伽噺があるらしい。その白兎が神様からユエを賜り、月に住むことを許された。そうして生まれた天兎の世界では「兎は白ければ白いほど多くのユエを持ち、月に住むことができる」と伝える『天兎の教え』が信じられていた。
一方、地上には『地兎(ちと)』と呼ばれる黒兎が住んでいた。地兎は天兎だけが月に住む現状に異を唱えており、長らく天兎と敵対関係にあることからアオに接触を図ってくる。
紫苑は白と黒の兎たちの闘争に巻き込まれていく。
文字数 136,158
最終更新日 2021.04.23
登録日 2021.04.23
とある大学。理学部有する理学研究館第二棟。その三階に門を構える光の科学研究室。今年度春を迎え、そこに二人の新人学生が配属された。
一人は沢叶夜(さわきょうや)。とにかく騒がしい男子生徒で「楽しいことだけをする」というモットーに従って生きている。そんな彼は卒業のために必要な研究活動には興味が湧かないらしく否定的で、いつも逃げ回ってばかりいた。
もう一人は白坂凛璃(しらさかりり)。真面目で研究熱心だが、実家は生粋の政治家業という境遇から、なぜこの学部に進学したのか、周囲から不思議に思われていた。
二人はその相反する性格から対立するも、教員からは協力して卒業のための研究をするように言われてしまう。二人はいがみ合いながらも、仕方なく研究活動に取り組むこととなった。
文字数 136,620
最終更新日 2020.04.14
登録日 2020.04.14
大昔から、人類は人形を生み出してきた。
西暦三千年超。人類はその技術を高めた末、自らの生活を支える存在《ディア》を作り出す。ディアは海洋に建つ巨大な塔《世界樹(ワールドツリー)》によって稼働し、人類の無二のパートナーとしてその社会の根幹を担った。
そんな時代に生きる男子高校生那城蓮(なしろれん)は、ある日、街の展望台でディアと自称する女性アイリスに出会う。しかし蓮はそれが信じられなかった。蓮は彼女のことを人間だと思ったのだ。
後日学校で、蓮は友人の遠山珀(とおやまはく)に、アイリスについて相談する。珀は大昔にディアを開発した大企業《ガラテイア》の子息であった。
しかしそこに、珀の双子の姉である遠山翆(とおやますい)が二人を訪ねてきて、学校の先生が所有するという人間そっくりなディアについての調査を頼まれる。アイリスとの関連性も鑑み、蓮は調査を引き受けることにした。
文字数 145,214
最終更新日 2020.04.14
登録日 2020.04.14
サッカー大好き少年、大江空(おおえそら)は、幼い頃から天才選手と呼ばれ、将来はプロサッカー選手になることを夢見ていた。
そんな空は、あるとき練習に通う傍ら、アコースティックギターの路上ライブに魅入られる。それはフードで正体を隠した二人組のギタリストによるもので、二人の快活な曲を聴くと、胸の内に抱く夢を応援されているような気持ちだった。
ところが、空は中学二年の冬に左膝を負傷し、サッカーをすることができなくなった。空は夢を失ったのだ。
時を同じくして路上ライブも行われなくなり、世間では唯花(ゆいか)という芸名の天才ミュージシャンが知られ始めていた。
二年後、空は地元の公立高校に入学し、そこで同じクラスになった女生徒、鳴海玲奈(なるみれな)が、かつてのライブと同じ曲を弾いている姿を目撃する。
さらにそこに、天才ミュージシャンの唯花である千種一華(ちぐさいちか)が、編入生としてやってきて……。
文字数 122,443
最終更新日 2020.04.14
登録日 2020.04.14
椎名馨(しいなけい)の住む街にある私立風彩大学では擬似実体映像技術、いわゆる触れられるホログラムについての研究が盛んである。その付属校である東西南北の四つの高校では、夜の校舎を会場とし、技術の試運転のため、秘密裏にあるゲームが行われていた。付属校に通う生徒は、このゲームへの参加および試運転に協力をする代わりに、ゲームで勝てば学校というコミュニティにおいて、一つだけ願い事を叶えてもらうことができる。
風彩大学付属南高校二年の馨は、夏休み明けに突然、大学生である姉の優璃(ゆり)から、ゲームに参加して願いを叶えるように告げられた。
「馨が姉ちゃんのために、学校にある大事な銀杏の樹の広場を守りなさい!」
姉が言った銀杏の樹の広場とは、馨も好むお気に入りの場所であり、学校の増築工事に際して撤去の危機に晒されている、今は廃れた小さな広場だった。
馨は願いを叶えるために、昼間の学校に通いながら、夜のゲームで奮闘することになる。
文字数 156,073
最終更新日 2020.04.14
登録日 2020.04.14
一般的な高校生「川澄詞(かわすみつかさ)」は、風彩という街で日常を過ごし、花のように明るい女性「唯花(ゆいか)」と出会う。そして唯花は唐突に、あなたは寿命を失くしている。余命幾年もない状態でいると詞に告げた。
彼女曰く、この世に存在するものは総じて、些細なきっかけでなくしものをする。自分の一部であるものを失って“遺失者”と呼ばれる存在になるようだった。聞けば唯花も自身の死を失っており、千二百年も前から不死身となってなくしものを探しているのだとか。
唯花は遺失者を見つけ、その遺失を解決するという仕事をしていた。遺失が解消した際には、その遺失に関わる“特定の力の宿った品”が発現し、それが巷に流出すれば混乱を招くことは必至であるため、回収を行っているのだ。詞はそれを手伝いながらなくしものを見つけてもらう契約を結び、共に過ごすうちに唯花に魅かれてゆく。
文字数 146,308
最終更新日 2020.04.14
登録日 2020.04.14
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