「ヤマト運輸は完全にルール違反」 日本郵便と協業の分野で新事業開始

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ヤマト運輸の車両(「Wikipedia」より)

 日本郵便への小型荷物(旧「ネコポス」)の配達委託を中断することを申し入れ、同社から120億円の損害賠償を求めて提訴されたヤマト運輸。日本郵便は昨年6月に合意したばかりの提携をヤマト運輸が一方的に反故にしているとして反発を強めているが、ヤマト運輸は今年8月には日本郵便と手掛ける小型荷物配送の「クロネコゆうパケット」と競合する自社独自の「こねこ便420」を開始。業界からは「完全にルール違反であり、日本郵便にケンカを売っている。ここ数年のヤマトの経営は理解不明なことが目立つ」(大手配送企業関係者)という声も聞かれる。一方、日本郵便の郵便事業は多額の赤字となっており、2015年に6200億円を投じた豪大手物流会社トール・ホールディングスの買収が原因で17年に約4000億円の減損が発生し、効果を出せずに21年には売却と特損計上に追い込まれるなど、日本郵便も経営の迷走が目立つ。業界関係者は「経営が迷走する企業同士が提携して失敗した典型例」と指摘する。

 ヤマトショックが世間を驚かせたのは昨年6月。メール便「クロネコDM便」と小型荷物「ネコポス」の配達を“長年の宿敵”とされた日本郵便に委託すると発表。さらに約3万人に上る配達員(クロネコメイト)との業務委託契約を25年3月末までに一斉に打ち切ることを発表した。だが、合意から1年半後の今月、ヤマトが25年1月~26年3月に「ネコポス」の後継サービス「クロネコゆうパケット」の配達委託を中断したいと日本郵便に申し入れていたことが判明。日本郵便はヤマト運輸に損害賠償を求めて提訴するに至り、蜜月は短期間で終わりを迎えることになった。ちなみに、メール便の委託については継続する。

 2度目のヤマトショックが起きたのが先月。親会社ヤマトホールディングス(HD)は、2024年4~9月期連結決算は営業損益が150億円の赤字(前年同期は123億円の黒字)、当期純損益は111億円の赤字(同53億円の黒字)になると発表。4~9月期としては2019年以来の5年ぶりの赤字に転落したのだ。日本郵便への配達委託などによるコスト削減効果や取扱数量の増加、集配拠点の集約などにより、ヤマトHDは当初、25年3月期の連結営業利益が前期比25%増の500億円になるとの見通しを発表していたが、営業利益を当初予想から400億円引き下げて100億円(前期比75%減)になると発表。連結純利益も従来予想を270億円下回る50億円(前期比87%減)に引き下げた。

「正規社員ではないからといって、なかには長年働いてきた人も多い3万人ものクロネコメイトとの契約を打ち切るというのは、これまでのヤマトであれば考えられない。また、小型荷物の委託中止については、要は自社でやったほうが売上も利益もあがるので手放したくないという理由だが、小型荷物はフリマアプリなどの普及で取扱数量はここ数年伸びており、宅急便と一緒に配達できるので業務効率的にもプラスだということは、以前からわかっていたこと。さらにいえば、委託中断の理由として配達の遅れが目立っていることをあげているが、日本郵便に委託すればそうなることも、誰もがわかっていたこと。業績が黒字予想から一転して赤字に転落した点も含めて、内部でいったい何が起こっているのかと心配になるほど、今のヤマトの経営は理解に苦しむ」(大手配送企業関係者)

「今の経営体制では日本郵便のたて直しは難しい」

 一方の日本郵政も苦境が続く。23年度の同社の郵便事業収支の営業損益は896億円の赤字で、26年以降も赤字が続く見通し。主な要因は国内郵便の低迷で、デジタル化の進展に伴う郵便物の減少などにより前年比701億円(5.9%)の減収となり、918億円の赤字。国内普通郵便の営業収益(売上高に相当)は21年度からの2年間で859億円減少しており、その減少の勢いは速い。