「公開されている情報で平均年収などを見ると、セブン&アイやニトリなどに比べて大きく水をあけられており、決して給与水準が高いわけではありません。ただ、一定の成績を上げている方はそれなりの報酬を受けているようで、信賞必罰という感じで成績に応じた給与をもらっていると感じました」
店舗ごとに仕入れが異なるため、すぐ近くの店舗で同じ商品を扱っても値段が違うというクレームも耳にする。“反チェーンストア”のデメリットともいえるのではないか。
「確かにそういったクレームもあるかもしれませんが、ほかのチェーン店より高いとか、買った翌日にセールで値段が下がっていたなど、似たようなクレームは常にあるので、経営上、あまり気にする必要のない範囲かと思います」
大きな裁量が与えられる一方で、誤発注などのミスがあった場合に責任を負わされるのは、従業員によっては負担ではないだろうか。
「確かにそうですが、だからこそ売り切ろうとする姿勢も強いのだと思います。たとえば、『興味期限切れ』などと銘打ち、消費者の興味が薄れている商品を安売りするといった手法を取っている店舗もありました。また、『(この商品は)隣の〇〇店が安いです』というポップを掲示して、近隣の店舗で協力して販売しているケースもあり、驚かされました」
臨機応変な販売手法を考えることを身につけられるのであれば、ドンキでアルバイトをした学生は社会に出た時に役立ちそうである。ほかに、ドンキのような経営を行っているチェーン店はあるのだろうか。
「見当たりませんね。またドンキは経営手法だけでなく、立地が非常に良く、店舗に適した土地を見つけるのが上手だと感じます。つまり、店舗開発の担当者が優秀だといえます。ドンキは品揃えや価格設定、そして今回のような仕入れ体制が注目されますが、現在ドンキの子会社になっている長崎屋を買収して以降、食品を充実させることで毎日お客さんが来店する“言い訳”をつくっている点こそが注目すべき点だと思います。毎日きちんと集客できているからこそ、大胆な経営ができているのではないでしょうか。
また、地道にインバウンド(訪日外国人)の集客をはかるなど、確実にお客さんが店舗に足を運ぶように対策しています。店づくりもそうですが、外国でも日本旅行を計画している人に対して、訪日した際に店を訪れるような施策もとっています。そういった地道なアプローチが、経営の地盤を強くしていると思います。
さらに、食品を選ぶ際のお客さんは1円単位でシビアに価格を見ます。しかし、そこから雑貨などへ目を向けた場合に、BGMや雰囲気を変えたフロアづくりをすることで細かい値段を気にしなくなるように、巧妙な店舗設計がなされています」
アルバイトも含めた売り場担当者へ大きな権限を委譲するという大胆な経営や、客の目を引く陳列方法などが注目されがちだが、その裏では実に緻密な計算によって成り立つ経営があった。
(文=Business Journal編集部、協力=坂口孝則/未来調達研究所取締役)