「同様の事例は全国各地で生じていますが、大きな要因としては長時間労働による教員人気の低迷があげられます。教員確保のため、文科省は教員採用試験の『標準日』を今年度の6月16日から、来年度は民間企業の面接開始より前の5月11日に前倒しすることの検討を各教育委員会に求めたり、教育委員会が県外でも就職説明会を実施して人を呼び込もうとしたりし努力していますが、結局は県をまたいだパイの取り合いに終わってしまい、根本的な問題解決にはつながりません」(内田氏)
政府は教員不足の解消に向けた対策を打ち出している。文部科学省は教職調整額を月給の4%相当から13%相当に引き上げるための関連費用を2025年度予算概算要求に計上。このほか、学級担任への手当を月額3000円、管理職手当を月額5000~1万円増額することや、生徒指導担当の全中学校への配置などを検討している。
「長時間残業が解消されない大きな原因は、労働時間と賃金が連動しないと定めた給特法にあり、また現場の教員たちが求めているのは賃金アップではなくて長時間労働の是正なので、単純に手取り額を増やすという施策は長時間労働の削減にはつながりにくいでしょう。全国の教員の教職調整額を一律で10~13%相当に引き上げるのに必要な財源は数千億円に上りますが、ICTの校務支援システムを拡充させるなど教員の負担を軽減する施策にお金を使ったほうが、教員のなり手不足解消に資するのではないでしょうか。
また、もし仮に一部で報じられている残業時間に応じた手当の支給が実現されれば、国・教育委員会・学校は本気で労働時間の削減に取り組まなければならなくなるので、教員不足の解消につながる可能性があります」(内田氏)
(文=Business Journal編集部、協力=内田良/名古屋大学教授)