今回の論文が注目されている理由は、おそらく多くの人の肌感覚として、誠実な対応をした企業よりも、無言を貫いた企業のほうが“逃げ得”をしているように感じるからではないだろうか。
「沈黙し続ければ、いつかは沈静化します。しかし、その企業に別の問題が持ち上がった場合に、沈静化していた過去の騒動が再燃するリスクはあります。また、他社で類似の炎上騒動が起きた場合に“飛び火”することもあります。さらに、その企業が後に被害者的立場でトラブルが起こった場合でも、なんらかの情報発信したタイミングで、『被害者になったときだけ情報発信するのか』といった具合に叩かれたりします。沈黙という選択をする場合でも、それらのリスクをはらんでいることは認識しておく必要があります」
沈黙することで、一時的には逃げ切れるかもしれないが、その後にも騒動が再燃するリスクをはらみ続けるというわけだ。そうすると、特に飲食店や小売店、消費財メーカーなど、一般消費者を相手にする企業は、中長期的な視点でみた場合に、謝罪会見など誠実な対応をするほうが賢明な選択といえるのかもしれない。では、謝罪する場合に重要なポイントとなるのは、どのようなことだろうか。
「まず速やかに行うことです。時間がたつほど印象は悪くなります。また、言い訳がましくならないように、自社の非がどこにあるのかを明確にし、その点についてきちんと謝罪すること。そして再発防止策を伝えることが重要です」
炎上した企業が謝罪文を出しても、その内容によってはかえって消費者の反発を招くことも珍しくない。
「今までにご相談いただいたケースでみると、対応しないという選択をした企業の多くは、騒動の元となった出来事を隠したいという思いよりも、『これ以上広まってほしくない』との思いを持っているようです。謝罪会見を行ったり謝罪文を出すことにより、騒動を知らなかった人たちにまで知られてしまう、ということを危惧している企業がほとんどです」
ケース・バイ・ケースではあるが、ネット炎上した企業は対応しないこともひとつの選択肢ではある。だが、やはり一切、対応しない企業は不誠実に見える。もしかして、“不誠実な企業”というレッテルを貼られても、それすらも忘れられることを期待しているのだろうか。
(文=Business Journal編集部、協力=前薗利大/一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所主席研究員)