「2018年に『変革2027』が出た際にも、ずいぶん先の話だと感じる向きが多かったようですが、今回統合するポイントも、それぞれの規模が大きいので、内部調整やシステム統合など、数年単位で時間がかかるのも仕方がないのかなと思います」
――JREで生み出される経済圏は、楽天やauの経済圏に匹敵、もしくは上回る規模になりうるのでしょうか。
「何を比較対象にするかによって考え方は変わるかと思いますが、たとえば会社規模で考えると、楽天グループは2兆円くらいで、JR東日本もそれに相当する規模ですから、ポテンシャルは同等といえるかもしれません。また、カードの発行枚数で見ると、楽天は3000万枚を超えており、クレジットカードでは最強との見方が強いですが、Suicaは現時点で9200万枚発行されています。Suicaはクレジットカードではなく電子マネーなので、単純に比較はできないですが、会員の母数が3倍も大きいですし、移動という日常生活に密着しているという点で、Suicaは楽天に比肩、もしくは超えてくる可能性を秘めているといえるかもしれません。さらに、楽天などは高齢者層が少ないですが、高齢者でもSuicaを使って移動はします。年齢層の幅が広いので、将来的な成長の可能性も大きいのかなと期待できます」
――課題として考えられるのは、現在はSuicaの経済圏がJR東の範囲に集中しているので、全国規模でみると弱いのではないかという点です。
「確かに拠点となるのは東日本なのかもしれませんが、Suicaは全国の交通ICは共通化されているので、経済圏は東日本に限らないと思います。また、PayPayなどのQRコード決済はアプリを立ち上げるのに時間がかかるなどオペレーションコストがかかります。しかしSuicaはかざすだけで決済できるので利便性は高く、QRコードよりも優位な点が多くあります」
――Suicaの新アプリが始まるまでにあと4年あるので、ほかの経済圏がどのくらい成長するかという未知数の部分もありますが、それでも他社に引けをとらないくらいの規模の経済圏をつくれるとみることができますね。
「JRE BANKについても、あまりにも得すぎて、ほかの銀行関係者などと話をしていると『ずるい』との声が出ています。あれほどのサービスができてしまう力があるということは、今後、どんどん人が流れていくことは容易に想像できます。実際にJRE BANKの申し込みも圧倒的でしたので、経済圏が非常に大きくなるのは間違いないでしょう」
――ほかの小売業者が銀行業に乗り出すよりも話題性も大きく、スピード感も圧倒的だったJRE BANKは、やはり潜在的ニーズの大きさとともに、消費者の期待感も大きいように感じます。
「そうですね。連日、申し込みがストップかかるほどで、成長の度合いも大きくなりそうです。誰もが日常的に利用する公共交通機関に、特典を付けられるというメリットは非常に大きいといえます。イオンや楽天など小売業では、買い物にポイントを付けることが中心で、乗り物を利用することに割引特典を付けるといったことはできません。その点で、JRは競合が少ない独占市場で事業展開ができるわけです」
他の銀行関係者が思わず「ずるい」と漏らしてしまうほど、JRE BANKはオトクだという。裏を返せば、他行がマネできないほどのサービスをJRE BANKでは打ち出しているといえる。今後もさらに成長を加速させる可能性がありそうだ。
(文=Business Journal編集部、協力=足澤憲/オモチ取締役)