東京大学や京都大学、医学部といった超難関大学への合格者数トップ50校のうち、41校が中高一貫校というデータがある。多くの中高一貫校は、中学・高校6年分のカリキュラムを前倒しで授業を進め、高校2年生までに高校3年生のカリキュラムまでを終え、高校3年生の1年間はすべて大学入試対策に充てる。大学入試でも先んじることができ、その結果として難関大学への合格実績が高まるわけである。そのため、中高一貫校への入学を希望する受験生が増えている。そんななか、中高一貫校で高校募集をとりやめる動きが広がっている。専門家に分析してもらった。
本郷、都立富士、都立武蔵、都立両国、都立大泉、都立白鷗といった中高一貫教育の名門校が、続々と高校募集を取りやめている。特に首都圏の公立中高一貫校でその傾向が強まっている。6年間のカリキュラムを一本化するために、中学募集だけにしたいという思惑は想像にかたくない。だが、一方で高校募集が中学募集より多い学校も多数ある。その違いはどこにあるのか。中学受験事情に詳しい安田教育研究所代表・安田理氏に話を聞いた。
――首都圏の公立中高一貫校で、高校募集をやめる動きが広まっていますが、その背景には何があるのでしょうか。
「東京都内にある公立の中高一貫校は、すべて高校募集をやめました。都立が10校と、千代田区立九段中等教育学校の計11校が公立中高一貫校で、うち九段を含む6校は開校当初から高校募集のない中等教育学校でした。
校名を挙げると、白鷗高校附属中学、両国高校附属中学、武蔵高校附属中学、富士高校附属中学、大泉高校附属中学という、高校に中学校が附属する形の一貫校では、高校募集を行っていました。それに対して小石川中等教育学校、桜修館中等教育学校、立川国際中等教育学校、南多摩中等教育学校、三鷹中等教育学校の5校は、もともと高校募集をしていません。
東京の場合、高校募集を行っている学校でも中学募集のほうが募集人数は多い状況でした。高校から入学する生徒にしてみると、募集枠が少なく狭き門であるうえに、中学校で人間関係ができあがっているところに少数で入っていくことになるわけで、心理的にも抵抗があり、応募者が少ない状況が何年も続いていました。そこで、高校募集をやめようという流れになったようです」
――つまり、受験生側から見ると、公立中高一貫教育校の高校募集に関して需要はあまりないというわけですね。
「需要がないというより、高校受験生からすると、他の生徒と同じスタートラインに立てる学校に入りたいということだと思います。中高一貫校は、授業を先取りしていたり、部活もすでに3年間人間関係などが出来上がったりしています。そこに入るのは抵抗があるのではないでしょうか。都立に関しては、中学募集のほうが枠が大きく、高校募集は枠が小さかったため、高校募集にはあまり集まらなかったのです。
一方、千葉の県立千葉中学校、千葉県立東葛飾中学校や、埼玉のさいたま市立浦和中学校は、高校募集のほうが人数が多いので、高校から入学する生徒が少数派にならず、入学希望者が多く集まっています。ちなみに千葉市立稲毛国際中等教育学校は来年から高校募集をやめます。また、神奈川の横浜市立南高校・付属中学校は、2026年度入学生から高校募集を閉じます」
――首都圏以外ではどのような状況でしょうか。
「愛知県が初めて中高一貫校をつくるのですが、高校募集を多数派として設定しています。このように、高校募集が多数派である学校では、今後も高校募集を閉じることはないでしょう」